2021年度「DX銘柄」を選定 経済産業省の狙いとは?
上場企業約3700社の中から、「DX銘柄」「DX注目企業」を設ける狙いや今後について、経済産業省の荒井勝喜商務情報政策局長に聞いた。
―東京証券取引所と共同で実施する狙いは。
「2019年度まで『攻めのIT経営銘柄』として進めてきたが、DXの取り組みを喚起するために現在の形に改めた。銘柄として指定することでマーケット(市場)から評価される仕組みの一つとしても実施している。withデジタルへ社会が
シフトしていく中、ITをツールとして使うだけでなく経営や組織を変えることに重点を置いている」
―21年度に選ばれた企業の特色は。
「どの企業にも言えるが、経営層のリーダーシップが欠かせない。DX推進に向けて明確なメッセージを出し、社内で新たな挑戦を進める環境が共通している。急に取り組めないことも多いが、トップの考えが継続的に首尾一貫した上で社内に浸透していかないと他社も巻き込んだイノベーションにも結びつかない。連続受賞している企業もあるが、毎年定める選定基準に対して変化に適応していることの表れでもある」
―コロナ禍で社会の在り方も大きく変化しています。
「まずはレガシーな企業文化からの脱却が必要になる。単にITを使った製品やサービスを展開するのではなく、次世代に向けてどんなビジネスモデルを築くか、業態転換をしていくかなど柔軟に追い求めることが大事になってくる。業界によってはIT化に捕らわれ、現場の作業量が増えて負担につながった声も聞く。そうした意味ではざん新な改革よりも構造変化をどう取り込むかといったスタンスも問われる」
―中小企業を巻き込んだ社会全体でのDXの流れを生み出すために肝となる部分は。
「ITは物理的制約を取り払い、企業や地域特色に合わせたDXのやり方もあると思う。日常でスマートフォンを使いこなす人は多いが、経営に絡むと『ITやDXは難しい』と先入観を持つ人も存在する。一方で中小企業のほうが社内全体にビジョンが浸透しやすい。日本は腰を上げるまでに時間がかかるが、いったん動き出すと早い。企業や社会が一歩を踏み出すための施策としての道筋を丁寧に描いていくことが我々に求められてくる」