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日刊工業新聞注目の企業を公開! ~DX銘柄2021選定企業から~

経済産業省が2020年12月に発表した「DXレポート2(中間とりまとめ)」によれば中小企業の95%は「取り組んでいない」「取り組みはじめた」段階で、危機感の共有や意識改革の段階になかなか至っていないようだ。しかし日本の産業を根底で支える製造業はじめ中小・中堅企業などあらゆる現場で、生産性の向上や刻々と変わる社会ニーズに対応するためにDX推進は欠かせない。

「DX銘柄2021」「DX注目企業2021」に選ばれた上場企業は、優れた情報システムの導入やデータの利活用だけにとどまらず、デジタル技術を前提としたビジネスモデルそのものの変革や経営変革にチャレンジし続けている。ITやDXは難しいという先入観を持つ経営者も少なくないが、中小企業であれば社内全体にビジョンが浸透しやすいメリットもある。DX銘柄2021選定企業の取り組み事例を紹介する。

日刊工業新聞注目の3企業を紹介

清水建設株式会社
 ものづくり(匠)の心をもつデジタルゼネコンへ
 清水建設は中期デジタル戦略2020に基づき、リアルなものづくりの知恵(匠の心)と先端デジタル技術により、「ものづくりをデジタルで」行い、「デジタルな空間・サービスの提供」を推進しています。さらに、いつでもどこでも安全に業務を行うことができる「ものづくりを支えるデジタル環境」を積極的に整備しています。以上のコンセプトを実現していく建設会社を「デジタルゼネコン」と定義し、当社が目指すゼネコン像としています。

中でも「デジタルな空間・サービスの提供」では、ものづくりで作成した3次元(3D)モデル技術「BIM・CIM」データと、リアルに収集したデータを組み合わせ、建造物に関わるすべての人に快適な空間・サービスを提供して参ります。具体的には建物運用のDXを支援する建物OS「DX‐Core」を商品化し、ICTベンダーや設備機器メーカーら35社との協業により、「DX‐Core」のデジタルプラットフォームの機能拡充に向け、建物内で稼働する各種設備システムの制御・機能連携を図るAPI(応用プログラムインターフェース)を開発しています。建物運用に関するサービスだけでなく利用者目線のサービスまで対象を広げられるのは当社の強みと言えます。

今後は新築・既存を問わず、建物の所有者および管理者や利用者など建物に関わるすべての方が利用できるデジタルサービス環境の提案、設計、構築、保守までをワンストップで提供して参ります。

旭化成株式会社
 デジタルの力でつながり、未来を共に創造します
 旭化成グループは「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献する」をグループ理念として掲げ、「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」を目指しています。その実現に向けてDXを経営基盤の一つと位置付け、事業バリューチェーンの全域で積極的に推進しています。またDXの成功要因は人・組織風土・データにあると認識し、さらなるDXの高度化を目指して挑戦を続けます。

【人】デジタル専門人材の育成・獲得のみならず、誰でもデジタルスキルを学習できるDX・オープンバッジ・プログラムを、世界中のグループ社員4万5000人を対象に開始しました。このプログラムはコンテンツ開発や実施を社外と共創し、学生や他の企業にも公開していく予定です。

【組織風土】社内外の共創の場としてデジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」を開設し、デザイン思考やアジャイル開発などの推進の場として活用しています。また全社DX大会などを開催、事例共有を通してグループ全体のDX推進マインドを醸成しています。

【データ】当社が持つ多様な事業・技術・人材から生まれるユニークなデータを共有・活用し、新たな価値を創造する取り組みを進めています。

DXの取り組みに終わりはなく、グループの総合力を結集して、さらなる推進を図っていきます。

◆DX成功事例
 ①マテリアルズ・インフォマティクスにより従来にない性能の製品を短期間で開発
 ②サイバーとフィジカルをつなぐデジタルツイン技術により製造・保全の高度化を実現
 ③知財情報を利用したIPランドスケープの活用により事業戦略の高度化を実現

トラスコ中山株式会社
 問屋による「ユーザー様直送」という環境保全

一般的に、当社のような問屋が得意先からご注文いただいた商品は、得意先を経由してユーザーへお届けすることが業界の常識になっています。ただ納期がかかる上に、商品をお届けする際の配送や梱包などが2度実施されることで環境に負荷をかけてしまっています。現在、当社が強化を進めている「ユーザー様直送」では、直接ユーザーに商品をお届けするため、「納期半減、梱包資材半減、配送運賃半減、環境負荷半減」を実現することができます。

それを支えているのが物流DXと即納に応える豊富な商品在庫です。当社ではユーザー様直送の要である高速自動梱包出荷ライン「I-Pack(アイパック)」を全国に5ライン導入。1ライン・1時間あたり720個で、ご注文いただいた商品の梱包出荷を高速で実施しています。また全国27か所の物流センターにはモノづくりで必要とされるプロツール(工場用副資材)を約47万アイテム在庫し、在庫金額約430億円、在庫総個数4500万個でユーザーをフォローしています。

「ユーザー様直送」を当たり前の景色にし「環境保全」につなげていく。今後も、物流DXを推進していき、常識にひそんでいる物流の壮大な「ムダ」を少しずつ解決していきます。

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DX銘柄2021から学ぶ デジタル変革
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新型コロナ感染症の拡大をきっかけに、「DX」いわゆる“デジタル変革”の推進が各所で急がれています。経済産業省と東京証券取引所は6月に「DX銘柄2021」を発表。選定企業にはDX推進の明確なメッセージがあり、新たな挑戦を進める環境が整っています。選定企業の取り組みを追い、DX実現のカギを探ります。

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