東芝騒動の調査で使われた「デジタル・フォレンジック」。その有効性は?

上原哲太郎デジタル・フォレンジック研究会会長インタビュー

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データ内容復元で立証

東芝の株主総会の運営をめぐる調査で、「デジタル・フォレンジック」の手法が使われた。大量のデータから当事者のやりとりを報告書に盛り込んだが、有効性はどうなのか。デジタル・フォレンジック研究会の上原哲太郎会長(立命館大学教授)に聞いた。(聞き手=高田圭介)

―デジタル・フォレンジックとは。

「さまざまな技術を活用して関係するデータを整理し、消去、改ざんした内容を復元しながら立証する手法を指す。犯罪や不正の調査には大量のデジタルデータから証拠集めが必要になる。かつてのライブドア事件でも経営層のメールの指示内容を調べるために用いられ、最近はサイバー攻撃の手口を調べる際にも使う」

―事実を立証する際の精度はどうですか。

「技術として絶対でない部分はある。見つからないようにデータを消すアンチフォレンジック技術が使われることや、偽データを誰かに押しつける方法も不可能ではない。ただ、基本的にデータをうまく仕分ければ必要な情報は取り出せる。不正を働く人の大半はアンチフォレンジックができるほどスキルは高くない」

―今回の調査で使われたことについての認識は。

「かつては大量のデータからキーワードで検索する際に関係ないものも選んでいたが、最近は文章構造まで見て振り分ける技術が発達している。今回は米司法省が信ぴょう性を認定しているソフトウエアが使われ、手法についても特殊な要素はないのではないか」

―今後のデジタル・フォレンジックの可能性や課題は。

「フェイク画像や音声などの判別にも広がるだろう。一方で“いたちごっこ”であるデジタルの世界は、サイバー攻撃をはじめ対処が難しくなっている。万が一、調査することを踏まえて企業に日頃から証拠を保全するよう啓発することも欠かせない」

*取材はオンラインで実施。写真は本人提供

日刊工業新聞2021年6月24日

COMMENT

高田圭介
編集局経済部
記者

25日の株主総会で永山治取締役会議長の再任が否決されるなど、会社側にとって株主から厳しい結果が突きつけられました。外部弁護士が10日に示した報告書の内容については当事者たちの弁明がない状態で真偽を断定できませんが、今回の騒動の引き金になったかと思います。某探偵アニメの主人公は「真実はいつもひとつ」と口癖のように使いますが、実際はどうなのでしょうか。謎めいた状況はしばらく続きそうです...

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