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AGV・ロボ活用で中小企業が実現する性別・年齢に左右されない現場作り

西部技研(福岡県古賀市、隈扶三郎社長)は、工場を自動化することで性別や年齢などに左右されない現場づくりを推進している。2020年1月に稼働を始めた主力拠点の宗像工場(福岡県宗像市)は、立ち上げの構想段階からフルオートメーションに近い発想で根本的な自動化に着手。将来の障がい者採用にも備え、バリアフリー化を進めるなど職場の整備充実を図っている。

西部技研はハニカムローターを用いた空調設備の先進メーカーだ。宗像工場は直径4メートル以上の揮発性有機化合物(VOC)濃縮ローターを作る量産化工場だ。中国ではVOC濃縮装置の旺盛な需要が続いており、それに対応した。

FAコンサルティング会社の協力を得ながら生産設備を自社設計で作り、製造工程を省人化・自動化し、「旧工場比2倍の月産80台、人手は半分の約10人」(隈社長)を実現。5月から大型ローター製造からユニット組み立てまで行う一貫生産体制に入った。

従来はほとんどを手作業に依存していた。1台の重さが2トンにもなる巨大なローターを分割し、1個当たりの重さ50キロ―60キログラムのブロック加工品を一つひとつ人が運んでいた。VOC吸着性能を高める特殊な薬品に浸す化学処理工程は、何度も持ち上げする重労働で週末に向かうにつれ作業員の作業効率も悪くなり、問題だった。今ではAGV(無人搬送車)や作業ロボットを導入したことで体力や年齢などを問わずに作業できる。

以前は難燃性を高めるためにブロック加工品を480度Cの高温で焼成する作業は2人1組で炉内に何度も運んでいた。この作業はフォークリフトで1回で運ぶようにし、炉内に置く場所に関する習熟度や体力を問わずに済むようになった。

現場の作業者は減り、製造ラインが最適化され、製品の手直しが少なくてすむ生産効率の良い工場を実現した。現在の女性作業者の役割は検査や仕上げといった軽作業のみだが「今後は現場職としての女性採用も増やしていく」(隈社長)。同じくゼロから立ち上げた中国の工場では成形機や巻付機のラインで女性が機械操作を担う。日本においても女性が働きやすい職場が整った。(西部・大塚久美)

ポイント

これまで体力ありきだったが、自動化により性別や年齢、習熟度、体力を問わない職場となった。次の目標は「生産状況の見える化」をしたスマートラインの実現。ムダを省き、生産効率を極限化していく。

日刊工業新聞2021年6月14日

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