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時事ユーチューバー・たかまつななさんが語る「ジェンダーギャップ」解消の糸口

「強制的にでも変えていかないと、社会全体は変わらない」

若者と政治をつなぐため、笑下村塾を設立し、全国の学校で出張授業を行うほか、時事ユーチューバーとしてイベントや講演などで、ジェンダー不平等やSDGs(持続可能な開発目標)など社会問題を分かりやすく発信するなど、精力的に活動しているたかまつななさん。「フェムテック」特集の最終回として、ジェンダー不平等の解消策や、あるべき社会像について、お話を伺った。

―これまでさまざまなキャリアを経験されていますが、ジェンダー不平等を実際に感じたり、身近に見聞きしたりしたことはありますか。

「例えば、NHKに2年半在籍して、『おはよう日本』などの番組を制作していましたが、番組が朝早く、泊まり勤務もありました。生活リズムが崩れ、過酷な勤務体系です。女性管理職が少なく、先輩の女性が倒れたりしていました。それでも女性社員の先輩たちが奮闘して、変わってきました」

「(私と)同世代の若い世代の人は男性も差別感覚が少ないと思います。5、6年入社が早い一部の男性先輩社員たちが育児休業を取得するなど、変わってきています。一方で、子育てのために辞める人も見てきました。泊まりを伴う勤務は厳しく、子育てをしながらだときつかったと思います。ただ、新型コロナの影響でこうした勤務体系が改善されてきていたように思います」

「一方で、会社経営の立場(※たかまつさんは現在、笑下村塾の代表を務める)からいうと、当社にも2人の女性社員がいて、どちらかが出産する際、不安が正直あります。なので、企業の経営陣の気持ちも分かります。ダメだと分かりながらも、採用の際、結婚や子どもなどのライフプランなど、すごく聞きたい気持ちもあります」

今の状況では管理職になりたくない女性が多い

―最新のジェンダーギャップ指数(2021年発表)では、日本は世界153カ国中120位と低迷しています。日本には何が足りないのでしょうか。

「女性も外国人も、労働力不足を補うという視点でしか、見られていません。女性の管理職の割合が低いのも、今の状況では管理職になりたくない女性が多いからです。仕事も子育ても両立できるイメージが湧かないからでしょう。『管理職になると、家庭を犠牲にするのか、なら嫌だ』と思うなんて悲しすぎます」

「政治家や企業の意思決定者も、家事はすべて女性という伝統的な意識をもつ人が世代的に多いと思います。若い人は意識が高いというのもありますが、貧困化が進んでおり、2人で働かないと厳しいという現実があるから、共働き世帯が増えているのだと思います。共働きである以上、家事や子育てなどを分担しないといけない環境におかれています」

一人ひとりの多様な働き方ができる社会に

―たかまつさんが関心のある健康課題や(健康の観点からみて)理想の職場像をお聞かせ下さい。

「生理がきつくて、仕事ができそうにないという人も少なくありません。生理休暇は月に数日という企業が多いようです。本当にきつい人にとっては月に数日では足りません。人によって生理に伴う体調の変化や不良の程度が違うので、対応は難しいです。(私自身は)女子校にいたので、生理についてもオープンに話していましたが、生理の話をタブー視する社会はよくありません。女性社員が生理がつらいということが事前に分かっていたら、対処しやすいからです。隠すのは、本人にとっても、その同僚や上司にとってもよくありません。ただ、プライベートなことなので、そこのバランスは難しいですよね」

「フェムテックがはやっていますが、従来は男性が考える、女性の商品が多かったと思います。今は、本当に女性のための商品が作られており、また、いろんな企業で、女性社員が戦っている、活躍していることがうかがえ、嬉しいです。これからは、子育てや介護などいろんなことが降りかかる上、外国人労働者が増え、多様な生き方が認められる社会になっていく必要があると思います。多様性というのは、『将来は専業主婦になりたい』といった夢を女性差別だと否定するのではなく、それも認めるものです。女性は働くべきで活躍すべきだと押し付けることが多様性ではありません。そこが誤解されてしまいがちです。女性、外国人、介護をしている方など、一人ひとりが多様な働き方ができる社会でないと、これからは成り立ちません。家に居ても、リモートができれば仕事は成立しますし、社会が変わっていってほしいです」

「文化・制度面では、終身雇用制度が限界にきています。制度を維持しようとしても、このままでは社会保険の適用も難しくなります。本業の足しにしようと副業についたとしても、体調をこわしてしまう人が多いです。週に3日勤務だとパートタイム扱いになってしまうことが多く、社会保険制度の見直しもすべきです。企業も人材確保が難しくなっている中、1度会社を辞めた女性が戻ってきても、辞める前と同じように働けるところも増えてきています。これはいい流れだと思います。また、専業主婦、パート、副業の人などが週に1、2日でも柔軟に働けるようにすべきです。週5日の勤務が定着していますが、週2日の正社員がいたりしても素敵ですよね。多様な働き方が求められています。いろんな働き方が選べて、選んだ人に負担をかけない仕組みをつくることが大事です」

メンタルヘルスのケアも充実していく

「自殺率も上がってきているので、メンタルヘルスのケアも充実していくべきです。がんは未然に防いで、早期に発見するという合意ができています。メンタルヘルスもがんと同様に合意ができるといいです。早期に防いで、うつや自殺とかも防げるといいと思います。スポーツを推進すれば、健康が増幅し、医療費も減らすことができます。こうした取り組みに補助金をつける動きもあります。八王子市は、大腸がん検診や精密検査の受診率を向上するため、『ソーシャル・インパクト・ボンド』と言われるモデル事業を始めています。米国の企業は、自前でメンタルヘルスケアの仕組みをもっています。企業内で自助グループがあるところもあり、日本でもそのような取り組みが広がってほしいです」

強制的に女性議員の数を増やしていく

―ジェンダー平等を実現していくには、どう突破口を切り開いていけばよいでしょうか。

「メディアがよく批判しますが、女性議員を強制的に増やすべきです。日本のジェンダー意識を変えるには、それぐらいしないといけません。働き方改革は、強制力をもつことで、変わりました。同様に、強制的に女性議員の目標数を決めてほしいです。候補者を増やすと言っていますが、パフォーマンスで終わらせることのないようウオッチが必要です。女性議員は女性に関する政策しかできない、といった色眼鏡で見られる、とある女性政治家が言っていましたが、それは残念です。強制的にでも変えていかないと、社会全体は変わりません」

政治分野での女性の少なさにマスコミは疑問を投げかけ続けるべき

―マスコミや行政の役割は何でしょうか。

「マスコミは、政治分野で女性が少ないことを、口酸っぱく繰り返していくべきです。企業も、理解のあるような広告をだしていくべきです。最近、そのような広告は炎上してしまいがちですが、気概をもって挑んでいくことが大事です」

「行政については、例えば、企業がソーシャル・インパクト・ボンドの仕組みを導入して、女性のあり方について、良い取り組みで効果を上げたら、補助金をだすなどといった制度をつくっていってほしいです」

自分の心と体に向き合ってほしい

―若い人へのメッセージを下さい。

「自分の心と体に向き合ってほしいです。命より大切な仕事はありません。今の仕事以上にあっている仕事があるかもしれません。向いていることとやりたいことは意外と違います。メンターなどでも良いですし、何でも話せる人がいるともっと良いです。あまりため込まないことが大事です」

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