フェムテックの先駆者!「ルナルナ」が20年以上支持される理由
エムティーアイは、ライフステージや悩みに合わせて女性の一生を支援する健康情報サービス『ルナルナ』を運営している。フェムテックサービスを提供するだけでなく、実際に自社内に取り入れて、働きやすい職場づくりにつなげようとしている。そのサービス内容と実際の適用事例の舞台裏を探る。
タブーだった生理を扱うサービスを切り拓く
なぜ、20年もの間、同社のルナルナサービスがユーザーからの支持を集めてきたのか。その疑問に対し、エムティーアイルナルナ事業部の那須理紗副事業部長はこう語った。
「ルナルナの役割は生理日の記録・管理だけではなく、妊娠活動から妊娠・出産・子育てといった一人ひとりのライフステージに寄り添いながら、女性の一生をサポートするサービスへ成長してきた」と強調する。
同社のルナルナサービスは、ガラケー時代の2000年11月に生理日の記録・管理サービスとしてスタートした。当時は、生理について公に語られることは少なく、女性は自身の生理についてカレンダーに書き込むなど、アナログで管理していた。これを何とか改善しようと、生理日管理という女性の習慣をデジタル化するサービスから始めた。
この20年の間、女性の社会進出に伴い、結婚しても働く女性が増え、出産年齢の上昇、不妊への不安を抱える夫婦が増加してきた。結婚すれば、避妊しない限りはすぐ妊娠するだろうと考える女性は多いが、実際には、妊娠のタイミングには個人差がある。こうした実態を踏まえて、妊活も正しい情報が求められるようになっている。
例えば、昔は一人の女性が一生のうちに経験する生理は約50回と言われていた。早婚で、多くの子供を妊娠する女性が多かったためだ。一方で、今は晩婚化が進んでいることと、子供の数が減っていることから、約450回と言われている。このため、体への負担が重くなり、何らかの不調を覚える女性も多くなっている。若い女性でも妊娠しにくくなっているケースもある。年齢が高くなるにつれ、卵子も老化すると言われ、妊娠するタイミングをよく見極める必要がある。子どもを持ちたいカップルにとって妊活は大きな悩みであり、ルナルナサービスは、こうした女性の悩みに対応し、夫婦間の妊活に関する理解に一役買ってきた。
ビッグデータ解析で判断材料を提供
ルナルナサービスの特徴として、データ活用という視点が見逃せない。那須副事業部長は、「これまで蓄積してきたルナルナの300万人のビッグデータ解析から、より精度の高い個人の排卵日を算出することができる」と胸を張る。
従来のオギノ式は、約100年前の1924年に荻野久作博士が発表したもので、排卵日から月経開始を一律で14-16日として排卵予定日を算出していた。これに対して、ルナルナでは、個人の月経周期に合わせた排卵日予測・妊娠しやすい日を独自のアルゴリズムで算出する。これは長い間継続してサービスを展開し、何百万人ものユーザーデータがビッグデータとして蓄積され、信頼性の高い解析ができるようになったことに基づく。
フェムテックサービスを自社の福利厚生に
那須副事業部長は、こう語る。「(フェムテックサービスを提供しているといっても、女性社員の意識は高いとは言えず)生理痛など女性特有の体調不良は我慢してしまう人が多い。(フェムテックサービスを)福利厚生として位置づけられれば、こうした(心理的な)ハードルは下げられる」。
同社自身、健康経営の一環として、福利厚生のメニューの一つに、オンライン診療を活用した低用量ピル服薬支援を導入している。ピルというと、避妊というイメージが強いが、それだけでなく、生理痛やPMS(月経前症候群)などの症状を改善させる効果のある薬だ。同社が2019年に実施した全社員向けの健康意識調査で、生理痛などの月経前後に起こる不調に悩んでいる女性社員が、約8割いることが分かった。こうした状況を踏まえて、社内の福利厚生制度として導入し、社員の健康をサポートしている。
オンライン診療を活用することで、女性特有の症状を気軽に婦人科に相談できる環境がつ くれる。また、診療や低用量ピルの服用が必要な場合の費用などを会社が負担し、経済的負担を軽減するだけでなく、通院にかかる移動や待ち時間を削減でき、仕事を休まずに受診が可能だ。会社としては、社員の約4割を占める女性が女性特有の健康課題を解決することで、より働きやすい職場環境と生産性向上を実現できるとの狙いがある。
社会全体で寄り添える環境づくり目指す
よりフェムテックを広めていくには、何が必要なのか。那須副事業部長は「まず、複雑で個人差の大きい女性の心と体について、女性自身はもちろん、男性も、企業も、社会全体も正しく学んでいくことが必要だ」と呼びかける。
同社は、女性の体と心の理解浸透プロジェクト『FEMECATION(フェムケーション)』を2020年11月から始めた。正しい知識を学ぶ機会を提供することによって、年齢や性別を問わず、社会全体で寄り添いあえる環境を目指し、女性たちが働きやすい社会の実現につなげる。第1弾として、生理と生理周期(ホルモンバランスの変化)について理解を深めるプログラムを実施し、今後は他企業と連携した活動を実施していく予定だ。