タイガー魔法瓶がJAXAと新開発。「きぼう」試料の回収容器がスゴい!
タイガー魔法瓶(大阪府門真市、菊池嘉聡社長)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)やテクノソルバ(神奈川県藤沢市)と共同で、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」での実験試料を地球に回収するための新たな「真空二重断熱容器」を開発した。タイガー魔法瓶が培ってきた保冷技術で、プラスマイナス2度Cの範囲で20度Cの保冷温度を12日間維持できる。一般的な回収容器と比較し、軽量化と小型化を実現し、低コストでの試料回収に貢献する。
容器はJAXAが6月に発射予定の米スペースXの有人宇宙船「ドラゴン22号機」とともに打ち上げられる。きぼうでの実験試料となるたんぱく質のサンプルを、20度Cを維持したまま回収できるか実証する。約1カ月半後に帰還する予定だ。
真空二重断熱容器は直径約131ミリメートル、高さ約350ミリメートル、重さ約3・16キログラムと軽量で、重量当たりの輸送コストを抑えられる。試料を入れる内容器に外容器をかぶせる二重構造で熱の放出を防ぎ、長期間の高断熱性を保つ。JAXAは長期的な使用を想定し、3年以上か6回以上の再利用を予定している。
今回のプロジェクトが成功すれば「きぼう」の活用の幅が広がるという。これまでは米航空宇宙局(NASA)の保冷サービスで試料を回収していたため「需給の関係で20度Cの保冷温度の要求が受け入れられず、実験を断念することもあった」(JAXA関係者)。
容器開発に携わったタイガー魔法瓶商品開発グループの中井啓司マネージャーは「この技術を検体や試薬の医療輸送などにも応用したい」とする。同社が宇宙実験の試料回収に携わるのは2018年度に次ぎ2度目。
日刊工業新聞2021年5月28日