タイガー魔法瓶協力のJAXA「再突入カプセル」、圧倒的な保冷性能で地上へのスピンオフも!

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大気圏に再突入するタイガー魔法瓶が開発に協力したカプセルの想像図(JAXA提供)

2018年11月11日、一つの小さなカプセルが宇宙から地球上に帰還した。カプセルには国際宇宙ステーション(ISS)の貴重な実験サンプルが搭載されており、大気圏再突入を含む6日弱(飛行実績)の期間、サンプルを摂氏4度付近に温度制御することに成功した。これは日本初の快挙で、今までは米露に頼るしかなかったサンプル回収を日本独自に行えるようになった瞬間だった。

このカプセルには誰もが1度は使ったことがある身近な技術―真空二重層(魔法瓶)を使った断熱保冷技術―が採用されていた。再突入カプセルというと厳しい空力加熱を想像される方が多いが、外表面は熱防護材(アブレータなど)によって保護され、時間も30分以下なので、サンプル保冷の観点では実は大きな問題にはならない。

問題はむしろ、ISS内で蓋(ふた)を閉じてから地上で冷蔵庫に入れるまでの長い保冷期間と、熱を伝える媒体となる空気の存在、そして厳しい空間制約であった。魔法瓶の断熱性能は真空層の厚さによらないので省スペースで高い断熱性能が期待できるが、一般的な魔法瓶では真空層のない口部からほとんどの熱が侵入しており、本来のポテンシャルを発揮できていない。

民生技術活用

そこで筆者は、互い違いに魔法瓶を二つ重ねる方法を考えた。この方法なら、口部も含めた全面を真空断熱できるだけでなく、熱が伝わる経路を遠回りさせることで断熱性能が飛躍的に向上することを熱解析上でも確認できた。

着水衝撃などに耐える構造設計はテクノソルバが、魔法瓶の設計/製造はタイガー魔法瓶が担った。民生技術を活用することでわずか2年間の短期開発が実現し、当初要求(3・5日間)を大幅に上回る7・9日間(試験結果)の保冷性能の実現に成功した。

地上に応用

本技術は大気中を前提としているので地上でも活用でき、保冷剤の種類や量を変えれば保冷温度/期間を含めていろいろなニーズに対応可能である。例えば要冷蔵品を国際輸送する際、国内の冷蔵トラックから飛行機の冷蔵コンテナに移し、現地の冷蔵トラックを手配する、という面倒な調整をすることなく、段ボールに入れて近所の郵便局から発送するだけで済むようになるかもしれない。宛先が砂漠の奥地でも、2週間あれば届くのではないだろうか。そういった地上用途へのスピンオフも今後考えていきたい。

◇研究開発部門第二研究ユニット主任研究開発員 畠中龍太

08年から宇宙航空研究開発機構(JAXA)で熱技術の研究開発などに従事。趣味は海外旅行やダイビングで、見たことがないものを見るのが好き。宇宙に行きたいので有人宇宙船に使える熱技術に力を入れている。ラジオ好きが転じて夢のパーソナリティーになったことも。

日刊工業新聞2021年1月11日

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