【音声解説】厄介者、台風をエネルギーに変える。「完全なクリーンエネルギー」への挑戦

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5回目は「厄介者、台風をエネルギーに変える。『完全なクリーンエネルギー』への挑戦」についてニュースイッチ編集部の小林記者に聞きました。紹介した記事と合わせて音声配信をお楽しみください。
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ひとたび台風が列島を通過すると、断水や停電など生活インフラが寸断されてしまう。2019年に千葉県へ上陸した台風15号により、大規模停電が発生したように、台風被害は甚大かつ、全国どこでも起こりえる。もし、被害をもたらす台風をエネルギーに変えられたら-。そんな夢に挑むのがチャレナジー(東京都墨田区)だ。「台風発電」と呼ばれる発電機を開発し、現在、離島で実証している。21年中に製品の量産化を予定するなど、夢の実現に近づいてきた。

台風でも発電

山がちで風向が安定しない日本では、風車の事故が諸外国に比べて多いとされる。特にプロペラ風車では乱流と強風が重なる台風に弱く、過回転を制御する機能が働きにくい。暴走の結果、破損などの事故につながる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によれば、風車の事故件数は増加傾向にある。18年の調査では全体の約16%が自然現象に起因するものだとしている。

同社が実証中の発電機。初期のモデルから翼が1つ減り、2つになっている

同社が開発するのは「マグナス力」を活用した、プロペラがない発電機だ。マグナス力は回転する物体を風の中に置くと物体周辺の気流が変化し、エネルギー(揚力)が生じる現象。野球の変化球やゴルフのスライスもこの力が働いている。発電機は円筒状の翼を自転させ、風を受ける中でマグナス力を生み出して発電する。翼の回転を止めるとマグナス力が発生しないため、中心軸が動かず、強風下でも暴走しない。それにより、通常のプロペラ発電機が発電できない強風の中でも発電が可能だ。清水敦史社長は「現状の発電容量は10kw少ないが、プロペラ発電機が稼働できない暴風時に発電でき、隙間を埋めることができる」と立ち位置を語る。

離島で実証中

この発電機をすでに石垣島で18年から実証稼働させている。21年5月からはフィリピン最北のバタネス州で実証が始める予定。思い描く理想は、デンマークのサムソ島にある。サムソ島は太陽光や風力などを組み合わせ、電力の“自給自足”を達成している地域だ。島外に過剰な電力を売却するなど、産業としても機能している。この島を念頭に置き、フィリピンの実証では風力発電に加え、太陽光発電などを組み合わせて「マイクログリッド(小規模電力網)」を構築する。清水社長は「島民の大きな悩みは電力不足から来る通信不良」とし、「電力を安定的に供給することで、QOL(生活の質)を高める」と意気込む。

製品の普及を狙うのは、台風銀座の地域だけではない。積雪の影響が大きい寒冷地だ。同社はプロペラに雪が積もる着雪や空気中の水蒸気が凍結し、氷層を形成する着氷などの寒冷地特有の課題を克服できるとにらむ。

NEDOの調べた2018年3月末の都道府県別設置数上位は、北海道(304基)と青森県(253基)。海に近く、広大な土地を必要とする風力発電にとって、北海道や東北地方は最適地だ。事実、政府の再生可能エネルギー振興もあり、全国的に見ても、風力発電機の設置数は増加している。固定価格買取制度の後押しから増加した小型の風力発電だけではなく、近年は発電量が1メガ(メガは100万)ワットを超える風車も増えてきた。それに伴い、より深刻になってくるのが、野鳥が風車のブレードなどに衝突するバードストライクだ。特に、冬鳥が越境してくる北海道では、オオワシなどのプロペラへの衝突が相次いでいる。同社のプロペラのない発電機は、この社会課題を解決できる可能性を秘めている。

目指すは大型化

6月からは同製品を量産化する予定だ。今後、用途を広げていくには、大型化は避けては通れない。ただ、発電機を大きくすることは、重さによる倒壊のリスクや設置できる土地が限定されるなど、制約もつきまとう。大型化と軽量化を両立させるため、炭素素材を使うと価格が大幅に上がってしまう。それでも、「設計を工夫し、まずは100kw。そこからメガワットの開発を目指していく」という。同社は資金と技術者を集めつつ、開発を加速させていく計画だ。

清水社長

近年、普及が進んできた再生可能エネルギー。だが、日本メーカーはコストの問題などに直面し、市場での立ち位置を確立できていない。だからこそ、同社は技術にこだわりを見せる。清水社長は「現在の再生可能エネルギーのプレイヤーと同じことをやっていても、シェアを変えることはできない。だから、これまでとは違う発想や技術で勝負しないといけない」と語る。

清水社長は将来的に水素などを活用した完全なクリーンエネルギー社会の実現を目指す。「我々の世代は原子力発電を将来に引き渡すしかない。だからこそ、将来世代がクリーンエネルギーを活用できる道筋をつけたい」。技術をテコにした同社の挑戦は続く。

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