日本人の新型コロナ感染症重症化因子、慶大などが有力候補を発見
治療薬探索に期待
慶応義塾大学や東京医科歯科大学などの異分野研究者で構成する共同研究グループ「コロナ制圧タスクフォース」は、日本人における新型コロナウイルス感染症の重症化因子の有力候補を発見した。新型コロナに感染した日本人約2400人の遺伝子を解析。重症化した65歳未満の患者440人は、免疫機能に重要な役割を担う遺伝子に近い場所のリスクとなる遺伝子の配列の割合が増えていた。重症化する可能性は健常者に比べ2倍近く高いことも分かった。治療薬候補の探索などにつながると期待される。
研究グループは65歳未満の重症患者440人と、参画する研究者グループが2019年までに集めた65歳未満の健常者の全遺伝情報(ゲノム)データを比べ、遺伝子上の特定の場所が新型コロナ感染症の重症化と関係があることを見いだした。遺伝子上の特定の場所はウイルス感染の免疫機能に重要な役割を担う遺伝子「DOCK2」の近くで見つかったことから、DOCK2の働きに影響を与えていると推察した。
特定の場所にある遺伝子の配列は日本人を含む東アジア人集団で10%程度見られ、欧米人集団ではほとんど見られない。そこで研究グループは、この遺伝子配列が日本人を含む東アジア人集団に特有の重症化因子の有力候補だと結論づけた。
成果は査読前論文として公開される。共同研究グループは慶大、東京医科歯科大のほか、大阪大学、東京大学医科学研究所付属ヒトゲノム解析センター、国立国際医療研究センター、東京工業大学、北里大学、京都大学の研究者で構成される。
日刊工業新聞2021年5月18日