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ダイムラー株売却、日産の資本戦略は「ゴーンから電動化」へ

ダイムラー株売却、日産の資本戦略は「ゴーンから電動化」へ

日産・ルノー連合とダイムラーは10年に資本・業務提携した(写真右からダイムラーのディーター・ツェッチェ元会長とゴーン日産前会長)

協業凍結状態 メリット薄く…

日産自動車は保有する独ダイムラーの全株式を売却する。売却額は約11億4900万ユーロ(約1500億円)。売却で得た資金は車の電動化の推進などに振り向ける。電動化などを巡っては、トヨタ自動車がSUBARU(スバル)と、ホンダが米ゼネラル・モーターズ(GM)と電気自動車(EV)を共同開発するなど、各社は連携を強化している。日産はダイムラーとの提携関係を続けるとしているが、両社の今後の動向が注目される。(西沢亮)

日産は保有するダイムラーの発行済み株式約1・5%を機関投資家に売却する。連合を組む仏ルノーも3月に保有するダイムラーの全株式を売却した。

日産とルノーのダイムラー株売却で、株式を持ち合う関係は解消される。一方、日産は5日、株の売却後も「ダイムラーとのパートナーシップに変更はなく、複数分野での協業はこれまで通り継続していく」とのコメントを発表し、ルノーも同様にダイムラーとの協業を続ける考えを示した。ただSBI証券の遠藤功治企業調査部長は「過去10年間で実務的な成果はほぼない。資本関係の解消のみに留まらず、継続するとしている提携内容も、今後解消されるのではないか」とみる。

日産・ルノー連合は2010年、両社のトップを務めていたカルロス・ゴーン前会長が主導する形で、ダイムラーと資本・業務提携した。日産とルノーがダイムラーの株式約1・5%をそれぞれ取得する一方、ダイムラーが日産とルノーに3・1%ずつ出資した。

提携では日産とダイムラーが総額約10億ユーロを折半出資し、メキシコに合弁工場を設立。17年から生産を開始し、現在も両社の高級車を生産する。また日産はルノーとともにダイムラーと積載量1トン級のピックアップトラックを共同開発して17年までに発売した。他にも3社はガソリンやディーゼルエンジンを相互供給するなど複数の取り組みを進めた。

ただここ数年は小型車やピックアップトラックの協業が凍結状態となるなど、提携関係は足踏みしていた。

自動車業界では電動化や自動運転など次世代技術を巡る連携が加速している。トヨタは4月、EVブランド「トヨタbZ」を立ち上げ、25年までに7車種を導入する計画を発表した。同ブランドではスズキや中国の比亜迪(BYD)などとも連携。部品の共用などで量産効果も取り込む。第1弾としてスバルと共同開発するスポーツ多目的車(SUV)タイプのEVを22年半ばまでに販売する。

ホンダは北米でGMとEVを共同開発して24年までに投入する。独フォルクスワーゲン(VW)と米フォード・モーターは、VWのEV専用車台を23年以降にフォードの欧州向け車両に提供する。

日産はルノーと三菱自動車との3社連合でルノーと共にEV開発を主導。三菱自とは軽自動車タイプのEVを共同開発して22年以降の投入を予定する。

ダイムラーは中国自動車大手の浙江吉利控股集団との連携を深める。20年にダイムラー傘下の小型車ブランド「スマート」を統括する合弁会社を折半出資で立ち上げ、電動化を推進する。一方、吉利は21年1月に中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)と自動運転技術を搭載したEVの製造販売で提携。同月には台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業ともEV関連の新会社を設立した。

変革期を迎えた自動車業界では、IT大手など異業種を含めた連携を模索し、変化に対応しようとする動きが相次ぐ。遠藤企業調査部長は「(次世代技術を巡り)仲間作りを進めてコストを下げるのは自動車業界の大きな流れ」と指摘した上で、日産・ルノー連合とダイムラーについては「これまでの経験から互いにメリットが薄いと判断しているのではないか。(次世代技術でも)一緒にやることはなかなか難しいと思う」と話した。

日刊工業新聞2021年5月10日

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