CASEの先へ、商用車の異業種巻き込み協業が拡大している理由

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トヨタ自動車、いすゞ自動車、日野自動車の3社は電動化技術の開発にも取り組む(3社とCJPTのトップ)

商用車業界で協業の動きが広がっている。以前からCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を軸にした連携の動きはあった。さらに最近では次世代技術を使った物流現場の課題解決やサービスの創出などCASEの先を目指した色合いが濃くなっている。電気自動車(EV)トラックなど電動車の市場投入も本格化するなか、今後は異業種も巻き込んだ協業も活発になりそうだ。(日下宗大)

トヨタなど、新会社 物流課題を解決

トヨタ自動車、いすゞ自動車、日野自動車の3社が4月に設立した商用車事業の新会社「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)」。CASE技術の進化は協調領域として、3社の知見を融合する。事業を開始して1カ月。滑り出しは「順調だ」と日野自の下義生社長は話す。3社から電動化や情報技術など専門人材も集まる。

3社協業の背景には物流課題がある。政府の「労働者過不足判断D.I.」によると、2月時点の運輸業・郵便業の値は、調査対象の全産業の値よりも7ポイント上回る34と不足感が強かった。

「CASEという巨大な波に車業界は直面している」(いすゞの片山正則社長)。この大きなインパクトを持つ技術革新を物流課題の解決につなげる。「社会のためにイノベーションを起こす力」(同)を強調する。日野自の下社長は「(物流現場では)個社を超えた協調領域が大変多い」と語る。

3社協業についてEYストラテジー・アンド・コンサルティングの早瀬慶自動車セクターリーダーは「CASEの枠を超えた取り組みだ」と解説する。CJPTはカーボンニュートラル、福島県での水素利用の実証実験、物流の効率化といったテーマに取り組む。従来の「協業」は部品の共同開発などにとどまっていた。しかし今回は「その先の提供価値に力点を置いているのが特徴の一つだ」(早瀬リーダー)。

自動車メーカーの協業のあり方がCASEで徐々に変化している。特に商用車は物流という社会活動の根本を支える。トヨタの豊田章男社長は「ユーザー目線で現場を中心に動きだそうとしている3社の取り組みに期待してほしい」と訴える。

まずはデータ連携などの協調領域を強化・拡大する取り組みが問われる。その先のステップで、CASEを手段に各社がユニークな課題解決サービスを生み出せれば理想的だ。

自動運転車 海外勢、共同開発進む

海外の商用車メーカーの間でもCASEに関わる協業や連携に向けた動きが広がっている。

世界最大規模の商用車メーカーの独ダイムラー・トラック。同社は2020年10月、米グーグル系の自動運転企業ウェイモと自動運転トラックの共同開発を始めると発表した。一定条件下で運転者の操作なしで走る自動運転「レベル4」のトラックを開発する。数年でウェイモの自動運転システムを搭載したトラックを米国市場に投入する。将来は他市場への展開も想定している。

ボルボの自動運転電動トラック「ヴェラ」。物流センターから港湾ターミナル間の短距離でコンテナを運ぶ

スウェーデンのボルボ・トラックはデンマークの物流企業DFDSと連携し、スウェーデンの港湾地区で自動運転の実証を進めている。DFDSの物流センターからコンテナターミナルまでの自動運転を試験的に行っている。ボルボの電動トラック「ヴェラ」を活用している。

燃料電池トラックに必要な水素エネルギーの活用に向けた動きも広がる。ダイムラーやボルボ、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなど5社は20年12月に新団体「H2アクセラレート」を設立した。水素インフラの拡充や燃料電池トラックの普及を目指す。

さらにダイムラーとボルボは燃料電池の合弁会社で25年から燃料電池システムの生産を計画する。

電動トラック投入相次ぐ

乗用車よりも商用車業界で先行していると見られるCASE。配送ルートなどが一定といったことなどが理由だ。ハード面では電動車投入の動きも顕在化してきた。22年度には日野自といすゞが小型EVトラックを発売する。

1年後の市場投入を控える日野自は4月、開発した「日野デュトロ Z(ズィー) EV」の概要を発表した。超低床で前輪駆動の作りとし、運転室部分と荷室部分を車内で行き来できる「ウォークスルー構造」にした。航続距離は100キロメートル超を目指す。普通免許で運転できるなどの特徴もあり、下社長は「(他の車が良いと)言わせないほど良い車だ」と太鼓判を押す。

EVトラックで先行するのが三菱ふそうトラック・バスだ。17年に、小型EVトラック「eキャンター」を世界に先駆けて発売した。現在、納車台数が200台を突破した。ハートムット・シック社長は「整備にあたるメカニックの教育や、顧客に対してはEVトラックの導入のアドバイスが重要だ」と話す。

ソフト面でもコラボ 電動車導入支援など

商用車業界では今後もCASEを主軸にした協業が広がりそうだ。むしろCASEを主因とした協業は“当たり前”で、商用車メーカーもハード面だけでなくサービスなどのソフト面での競争力も必要となる。

サービスの展開は異業種とのコラボレーションが不可欠だ。早瀬リーダーは「物流業者やエネルギープレーヤーとも組んでいくのが理想だ」と話す。

日野自動車が開発した小型EVトラック「日野デュトロZ EV」

その一つの動きとも言えるのが4月末に発表された日野自と関西電力による電動商用車の導入を支援する新会社の設立だ。運送事業者などに車両や設備、さらにITシステムを月額提供する。電動車の普及には緻密な運行管理と電力管理が重要。22年初頭の営業開始を予定し、電動車の稼働を支援するオープンプラットフォームを構築する。同プラットフォームには車両メーカーや設備メーカー、ITベンダーや電力会社の参加を念頭に置く。

「CASEやMaaS(乗り物のサービス化)ではいきなり勝負するステージにはならない」と早瀬リーダーは分析する。まずは業界内外とオープンな連携を進めることが望まれる。今はデータ連携やインフラなど争うメリットがない協調領域を築き上げる段階だ。その土台が固まった後、次世代技術の果実を提供する本格的な競争の幕開けとなる。

日刊工業新聞2021年5月5日

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