全国一斉のワクチン接種に臨む医薬品卸、供給「盤石化」で果たす責任
新型コロナウイルス感染拡大が発生した2020年3月以降、多くの企業が対応に追われた。こうした中、9月に医薬品卸の東邦ホールディングス(HD)は最大の使命である医薬品の安定的な供給体制を維持した。同年9月には医薬品の大規模高機能物流センター「TBCダイナベース」を稼働するなど、災害対策の強化を続ける。人命に関わる医薬品の供給体制をさらに盤石化する。
TBCダイナベースは、大田区平和島を起点に江戸川区臨海町までを結ぶ環状7号線の内側に位置する。内側であることに重要な意味がある。震度5以上の地震が発生した場合、交通の混乱防止の観点から環状7号線の外から内への車両進入ができなくなるが、TBCダイナベースから都内への医薬品供給を継続できるからだ。また建物や傾斜路の免震構造に加え、停電時でも72時間通常稼働できる体制を敷く。
東邦HDの有働敦社長は「災害や感染症のまん延といった緊急時の対応が集中する基幹病院は都内に多い。(TBCダイナベースの)維持費は高いが、有事に備える意味で重要な拠点だ」と話す。
TBCダイナベースの特徴の一つに省人化がある。最先端ロボット技術を多く採用し、医薬品のピッキング作業の95%自動化した。災害時の人手不足による医薬品供給への影響を低減できる効果もある。
さらに機械の導入と自動化で、医薬品の出荷精度99%以上を実現。これにより平常時から医療機関の大きな負担となる医薬品の検品作業が不要となった。有働社長は「日常業務の効率化というメリットがあるため、事業継続計画(BCP)の体制構築に積極投資をしてきた」と意義を説明する。災害時への備えが通常時の業務効率化にもつながり、一石二鳥となった格好だ。
今後、新型コロナワクチンの全国配送が始まる。過去に例がない全国一斉のワクチン接種という新たな使命も、医薬品卸のネットワークとノウハウを生かして進めていく。