「適正飲酒」の潮流にビール各社はどう対応するか?
ビール各社が適正飲酒を促す動きが加速している。低アルコールやノンアルコール商品の開発や拡充を進めているほか、商品に含まれるアルコール量をホームページなどで公開。アルコール飲料を製造、販売する企業にとって二律背反の取り組みだが、国連や世界保健機関(WHO)がアルコール問題の低減を提唱するなど、グローバルでの潮流になっている。(取材・高屋優理)
【商品比率上げる】
アサヒビールは3月にアルコール度数0・5%のビールテイスト飲料「ビアリー」を発売した。アサヒは酒を飲む人も飲まない人も互いに尊重しあえる社会を目指す「スマートドリンキング」を提唱。2025年までにアルコール度数3・5%以下の商品構成比を20%にする目標を掲げている。
目標達成にはアルコール度数3・5%以下の商品数を19年比で3倍強に拡大する必要がある。こうした背景もあり、アサヒはアルコール度数1%未満の商品群を「微アルコールカテゴリー」と位置付け強化を図っている。塩沢賢一社長は「21年内に微アルコールの商品を2、3商品出したい」とし、6月29日には第2弾の「香るクラフト」を発売するなど、商品の拡充を急いでいる。
【世界的傾向】
こうした動きはグローバルで進んでいる。世界最大手のビールメーカーであるベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブも、25年末までに、ノンアルコールまたは低アルコーのビール製品が総販売量の20%以上に拡大する方針を示す。
キリンビールは適正な飲み方を提唱する「スロードリンク」を打ち出している。3月にはグループ会社が運営するビアレストラン「キリンシティ」の33店舗で、飲み放題プランを終了するなど、適正な量の飲酒を促している。
また、グループのメルシャンと共同でノンアルコールのサングリア「モクバル」を6月に発売。ノンアルコールのサングリアは初めてで、ノンアルコール商品を拡充する。
アルコール問題の低減は、15年に策定された国連の持続可能な開発目標(SDGs)の健康分野でも目標の一つとして含まれており、WHOもアクションプランとして加盟国に提案している。
こうした流れの中で、各社が共通して取り組みを進めているのが、商品に含まれる純アルコールグラム量の開示だ。アサヒはホームページでの開示を3月から開始。当初、6月までに開示する計画だったが、一部の商品について前倒して表示している。キリンは6月上旬をめどに表示を始めるほか、サントリービール、サッポロビールは21年中の開示に向け、準備を進めている。