脱炭素化でEV向けメタル高騰、中国軸に資源争奪戦へ
電気自動車(EV)に使う金属素材の国際相場が、旺盛な中国需要を受けて高騰している。レアアースの一種でモーター磁石の原料となるネオジムは、コロナ禍前の2020年1月比約2・2倍にまで上昇し、約9年ぶりの高値圏を推移。電池の正極材に使うコバルトや炭酸リチウムは同約5割以上高い。拡大する脱炭素市場で主導権を握ろうとする中国の勢いが、相場に色濃く映し出されている。
中国では、政府の消費刺激策を背景にEV販売が好調でネオジム需要が拡大。中国汽車工業協会はEVなど「新エネルギー車」の21年の販売台数を前年比約3割増の180万台と見込む。足元では相場に調整が入ったが「需要が旺盛で当面高止まりする」(国内商社)との見方がある。
また、コンゴ民主共和国に偏在するコバルトは中国政府が備蓄に動いたことで、年明けから急伸した。「中国企業の先行的な投機買いが活発化した」(国内電池メーカー)ことも上昇を後押しした。
一方、他国も資源確保で対抗する。バイデン米大統領は2月にレアアースなど重要鉱物の調達を促す大統領令に署名。欧州諸国は20年に欧州原材料連合(ERMA)を発足し、リチウムなどの供給体制強化に乗り出した。日本では電池メーカーや商社など55社が1日、材料の供給網整備などに取り組む「電池サプライチェーン協議会」を設立した。
中国を中心に展開してきたEV材市場は、国際的な資源争奪戦へとシフトしつつある。中長期の需要拡大が見込まれる一方、材料の囲い込みなど主要国間でどんな供給網が構築されるのかも焦点となりそうだ。
日刊工業新聞2021年4月28日