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岐阜の部品加工会社がロボットシステムインテグレーター事業に参入した狙い

岐阜の部品加工会社がロボットシステムインテグレーター事業に参入した狙い

「ロボットテクニカルセンター東海」はコロナ禍対策で定員を絞り毎月開講

田口鉄工所はロボット用減速機の部品加工が主力だ。2工場で稼働する工作機械は約100台。自動化にもいち早く取り組み、現在稼働する8台のロボットのうちの1台は、30年前に導入した“年代モノ”だ。

「そこまで古いとメーカーもSIerも保守の仕方がわからない。自社で技能を蓄積するしかなかった」とロボットを扱う同社の技能の高さを田口頼之取締役は強調する。そのノウハウを生かし2019年にSIer事業に参入した。

まず始めたのがSIerの高丸工業(兵庫県西宮市)のフランチャイジーとして運営するロボット教室「ロボットテクニカルセンター東海」だ。コロナ禍対策で定員を絞った現在も赤坂工場(岐阜県大垣市)で3日間のコースを毎月開いている。

ロボット関連のリスクマネジメント指導も手がける。機械安全設計の国際規格「ISO12100」などを基準に導入計画を評価し、安全柵や非常時ボタンの設置の仕方などを含む適切な運用体制を助言する。「啓発にも力を入れる」(田口取締役)考えだ。

未来のロボット人材を育てる社会貢献にも取り組む。FA・ロボットシステムインテグレータ協会が主催する高校生などの若者向けロボットコンテスト「ロボットアイデア甲子園」で、岐阜県での地方予選の運営事務局を務める。20年はコロナ禍で中止になった同大会だが、21年内の開催を目指し、地元の高校などを勧誘中だ。

ロボットの設置や調整の業務は、まだ他のSIerからの受託が中心だ。SIer事業の売り上げはまだ少ない。ロボット販売の営業活動は始めており、「今後は自社で受注をし、SIer事業を本格化する」(同)とする。

そして田口取締役は「2人必要な工程を1.5人にするようなきめ細かい自動化を中小企業に提案する」と指針を示す。世界的な人手不足を背景に、本業のロボット用部品はさらに伸びそう。それでも「将来はSIer事業を本業と同じ売り上げにする」(同)考えだ。

【企業概要】

▽所在地=岐阜県大垣市中曽根町319の1▽資本金=1200万円▽売上高=5億円(21年3月期)▽従業員=50人▽設立=51年(昭26)4月


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日刊工業新聞2021年4月20日

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