米中摩擦が遠因?半導体製造装置が絶好調!
半導体製造装置各社の受注が好調だ。第5世代通信(5G)の普及やIoT(モノのインターネット)の進展などで半導体メーカーの投資意欲は旺盛。SCREENホールディングス(HD)は2021年3月期の半導体製造装置事業(SPE)の受注高が過去最高水準の2600億円(20年3月期は約2300億円)を超える見通し。22年3月期はさらに上回る可能性がある。ディスコは工場の増員態勢を夏前まで継続する。
SCREENHDのSPEの受注高は18年3月期の2671億円が過去最高。21年1―3月受注高が「800億円を大きく超える」(広江敏朗社長最高経営責任者〈CEO〉)ことから21年3月期受注が過去最高を更新する公算が大きい。
同社は3月に生産拠点「Sキューブ3」(滋賀県彦根市)の洗浄装置の生産能力を従来比10―15%高めた。工場面積の6割程度の設備導入にとどまっていたがフルに近い状況。DRAMなどメモリー向けも増え、高水準の設備需要が続くとみて22年3月期の受注高は「前期よりも強含みでくる印象」(同)という。
ディスコは呉工場(広島県呉市)、桑畑工場(同)、茅野工場(長野県茅野市)の3工場がフル稼働。繁忙期に合わせた増員態勢を「年初から春までの計画だったが夏前まで延長する」(ディスコ)。芝浦メカトロニクスは横浜事業所(横浜市栄区)でフラットパネルディスプレー(FPD)製造装置の生産スペースを一部間借りして半導体製造装置を増産している。東京エレクトロンは製造ラインの増強やIoT導入による業務効率改善を検討する。
半導体業界の国際団体SEMIによると半導体製造装置の20年の世界総販売額は前年比19%増の712億ドル(約7兆7000億円)と2年ぶりに過去最高を更新。データセンター向けなどの先端半導体需要がけん引する。
半導体メーカーの大型投資も追い風。台湾積体電路製造(TSMC)は21―23年の3年間で累計1000億ドルの投資に踏み切る。米インテルは200億ドルを投じ米アリゾナ州に二つの工場を建設する。和田木哲哉野村証券リサーチアナリストはリポートで「21年末頃からインテルからの装置受注は大幅に増加する」とする。変数は米中摩擦だ。米国による中国企業への輸出規制で先端半導体向け装置は日本製品も輸出が規制されているとみられる。半面、輸出規制で米中のデカップリング(分離)が進めば中国と同国以外の地域のそれぞれで設備投資が活発化する可能性もある。