自動化に欠かせない「減速機」需要が旺盛 ロボ・半導体製造装置向け生産増強
減速機メーカーが産業用ロボットや半導体製造装置向けに供給体制整備を急ぐ。ハーモニック・ドライブ・システムズは工場の新設やラインの拡充などを推進し、2017年ごろに比べて月間の生産能力を2倍以上にした。住友重機械工業も新工場を稼働させ、月間で従来比最大2倍の生産を可能にした。自動化を実現するには要素部品である減速機が欠かせず、高まる需要に対応する。
第5世代通信(5G)の普及、データセンターの増設、自動車の電動化といった世界の潮流の中で、関連する機器の生産に必要な産業用ロボットや半導体製造装置に搭載する減速機の需要が増えている。
ハーモニック・ドライブ・システムズは、主力の波動歯車減速機を穂高工場(長野県安曇野市)で生産する。19年に関連部品を製造する有明工場(同)に新工場を増設した。クロスローラーベアリングを製造する松本工場(長野県松本市)でも一部で波動歯車減速機の部品を製造する。各工場で新ラインの構築や自動化、多能工化も進め生産能力を増やした。
同社は2017年、中国を中心としたスマートフォン需要の高まりで減速機の供給が困難になった苦い過去がある。当時と比べ、今は2倍以上の生産体制を築く。国内営業本部の白沢直巳本部長は「各工場ともフル生産に近い水準」と話す。
需要をけん引するのは中国。食品の箱詰めやパッケージングのほか、5G対応スマホなどの製造に使う小型産業用ロボット向け減速機の需要が旺盛だ。一層の増産も検討する。
21年度に始動する新中期経営計画で、生産能力強化については調整中。前中計では日本、米国、ドイツ、韓国の生産拠点を合わせた波動歯車装置の生産能力で20年に月28万台を目指していた。新中計も同水準の目標を設定する可能性もある。
一方、住重では産業用ロボットや協働ロボット、搬送機械などに組み込む精密制御用減速機を増産している。主力拠点である名古屋製造所(愛知県大府市)では、20年5月に新工場を稼働。従来は一つの工場で加工と組み立てを行っていたが、新工場稼働後は第一工場で加工を行い、組み立ては新工場に移した。これにより従来比1・5倍―2倍となる月産2万5000―3万台に引き上げている。
20年夏までは新型コロナウイルス感染症の影響で低迷していたが、同年秋以降は半導体製造装置向けや小型産業用ロボット向けが好調に推移する。21年度も同様の傾向が続くとみられ、減速機メーカーの対応が注目される。