工作機械見本市が12日に北京で開催。日本企業は「リアル」の追い風をつかめるか
工作機械の世界4大見本市の一つ、中国国際工作機械見本市(CIMT)が12日に北京市で開幕する。中国市場は2020年半ば以降回復が続き、今後も需要のけん引役を担う見通し。新型コロナウイルス感染拡大以降、工作機械の国際展は中止やオンライン対応を迫られた。今回は久々のリアル展となり、この追い風を着実につかもうと日本メーカーの出展にも熱がこもる。(編集委員・土井俊、名古屋編集委員・村国哲也)
初出展が多数
「中国の受注環境は完全に戻った。勢いはさらに増すだろう」。牧野フライス製作所の高山幸久執行役員は中国市場の一層の成長に期待を込める。同社はCIMTで5軸横型マシニングセンター(MC)「a500Z」や自動車産業向け横型MC「J6」のほか放電加工機も訴求する。
旺盛な需要を取り込もうと、日本メーカーの中には現地初出展の製品も多く見られる。オークマは20年11月に発売した門型MCの旗艦機種「MCR―BV(ビーファイブ)」を現実の展示会としては初披露する。幅広い業界に、工作機械の総合メーカーとしての存在感をアピールする。
中国2工場の生産能力を段階的に増強中のヤマザキマザックは、中国初披露の5台を含め計12台を出展。強まる自動化の要望に応え、4タイプの自動化システムを展示するほか、電気自動車(EV)関連コーナーも設ける。CIMTを皮切りに中国2工場で大規模自社展も企画する。
EV向け提案
ジェイテクトはEVユニット生産用新型MC「e640V4―EX」を初公開。ロール成形用コンピューター数値制御(CNC)円筒研削盤も展示する。グループの光洋機械工業(大阪府八尾市)の平面研削盤などもPRし、EVや建設機械、ロボットなど幅広く需要を掘り起こす。
シチズンマシナリー(長野県御代田町)は主軸台移動型CNC自動旋盤の主力機「L20」のB軸用自動工具交換装置(ATC)搭載機など5機種を中国で初出展する。複雑加工が必要な医療分野などの需要を取り込む。
現地社員対応
国際展では通常、本社などからサポート要員を送り込むが、今回はコロナ禍を踏まえ現地社員だけで対応する出展者も多い。DMG森精機はアジアの国際展では初めて、現地社員と駐在員のみで対応する。森雅彦社長は「対応者には当社で20年以上勤務している者も多い」と自信を見せる。最新の5軸MCや自動化システムなどを多数出展する。
「中国のユーザーはデジタルよりもリアルの世界で買う傾向が強い」。三菱重工工作機械(滋賀県栗東市)の若林謙一社長は中国の傾向をこう捉える。同社は門型5面加工機と歯車機械を出展。リアル展の優位性を生かし成約につなげる。
日本勢ではファナックや三菱電機なども出展する。現地の受注競争が熱を帯びる中、牧野フライス製作所の高山執行役員は「自動化や加工技術などの支援を手厚くし差別化する必要がある」と指摘する。需要取り込みに向けて、単に高度な機械性能の提案だけでなく、技術面などのサポート力もカギとなりそうだ。