SMCが設備投資額を400億円に引き上げ、「空気圧」独走への狙い
SMCは事業継続計画(BCP)強化を狙いに、2022年3月期の設備投資額を21年3月期見通し比約2倍の400億円に引き上げる。工場や物流拠点、開発体制を国内外で拡充するほか、4月中に主要子会社と情報を共有する社長直轄組織を設置する。半導体製造装置や工場自動化(FA)などに欠かせない空気圧機器を供給する企業として、外部環境に左右されず事業を続ける供給体制を構築する。
SMCは約70万品目の品ぞろえと多数の製品在庫を持つのが強み。供給責任を考慮し、製品の70%を3日以内に納品する体制を整える。産業界で半導体をはじめサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性によるリスクが顕在化する中、SMCは大型投資に踏み切り、部品供給体制を一段と強化する。
BCP強化に向け、経営面では中国とイタリア、米国、シンガポールの主要子会社の社長と意見や情報を共有する「アドバイザリーコミッティ」を4月中にも立ち上げる。経営組織の一部ではなく、高田芳樹社長に助言する機関と位置付ける。
例えば巨大地震など有事の際に、地域間の連携や役割分担を明確にし、供給を止めない体制を維持する。
生産面では量産品工場であるベトナム工場(ドンナイ省)を強化。米中貿易摩擦の影響で中国の生産拠点から米国への輸出が滞る可能性を踏まえ、製造、加工、組み立て工程を拡張する。中国では北京市にある工場の生産を継続しつつ、今後の需要拡大を見据え天津市の工場を強化する。また、顧客の要望に応じたオーダーメード品も複数の拠点で生産できるようにする。
物流では2月に米インディアナ州の販売子会社の工場隣接地に新しい倉庫を稼働した。今後、日本国内や欧州などでも倉庫を拡充する方針。
また、日本、ドイツ、中国、英国、米国にある研究開発拠点ではサーバーや技術仕様を共有化。人的交流を加速し、どの時間帯でも専門性の高い問い合わせに対応できる体制を整える。