富士ゼロックスが駅構内などに展開する「個室型ワークスペース」のこだわり
コロナ禍でウェブ会議が増えた。外出先や移動中の隙間時間を活用して、静かな場所でウェブ会議に参加したい。そんなニーズに応えるのが、個室型ワークスペース「ココデスク」だ。富士ゼロックスが、駅構内や商業施設などの60カ所以上で展開している。
ココデスクは、机やいす、電源コンセント、大型モニター、無線LANなどを完備した1人用のワークスペース。ブース内の空気は常時入れ替わるようになっており、抗菌・ウイルス対策に有効な銀系無機抗菌剤のコーティングも完了している。「安心安全に仕事できると好評」(ビジネスプラットフォーム事業推進グループの谷口智郎氏)という。2月の登録者数は、2020年4月比18倍の1万5000人に伸びた。
同社がココデスクの開発を始めたのは、同社営業担当からあった「(社外で)安心して働ける場所が少ない」という声がきっかけだ。カフェのようなオープンな場所では電話で大事な話ができない。外部のシェアオフィスは1時間単位の利用向けが多く、短時間利用しにくい。そんな悩みに応えようと新規事業として始まった。
こうした社員のニーズを踏まえ、同社は18年に東京メトロと実証実験を開始。20年2月にサービスを始めた。こだわったのはワークブースの広さ。オフィスで仕事している状況と変わりなく、快適に過ごしてもらいたいという思いがある。谷口氏は「5センチメートル単位でブースサイズを広げるなど、繰り返し実証を行った」と開発の苦労を語る。
新型コロナウイルス感染が拡大し、ウェブ会議やウェブ面接が定着。最近は、仕事以外でも、就職活動や受験、英会話教室など、あらゆる場面でココデスクが利用されるようになった。
谷口氏は「ビジネスパーソンだけでなく、生活者に利用してほしい」と話す。今後は、市役所で行う書類の手続きや保険の相談などの窓口としての用途を視野に、他社との連携も検討している。また、現在は首都圏を中心に展開中だが、郊外にも設置台数を増やす。家の近くの駅や商業施設にあれば、気軽に利用しやすい。土日の利用者増も期待できる。
富士ゼロックスは21年度末までに現状比3倍の200超に設置を増やす。首都圏以外では初となる、大阪、名古屋にも複数台設置する。事務機器の販売で培った顧客基盤は、ココデスクを拡充する上で強みとなる。営業部門と連携し、全国に展開を広げる。(張谷京子)