大企業が再生エネルギー100%へ試行錯誤、ソニーの“マジック"とは?

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静岡県内の倉庫の太陽光パネル。自己託送の制度を使い、余剰電力を工場へ送電

大企業が再生可能エネルギー100%での事業運営を目指して試行錯誤している。再生エネ利用は温室効果ガス排出を実質ゼロにする「脱炭素」に不可欠でありながら、電気を大量に消費する大企業にはハードルが高い。日本の再生エネは入手手段が限られ、価格も高いためだ。こうした状況を打開しようと、さまざまな方法で再生エネ利用に挑む企業を紹介する。

ソニーグループは4月1日、子会社が入居するビル「ソニーシティみなとみらい」(横浜市西区)の電力契約を切り替えた。小売電気事業者のデジタルグリッド(東京都千代田区)がバイオマス発電所などから再生エネ電気を調達し、ビルへの供給を始めた。

ソニーは2040年までに事業で使う電気全量の再生エネ化を目指す。欧州拠点は再生エネ化を達成したが、HQ総務部EHSグループ井上哲氏は「日本が課題」と心配する。国内はグループ全体の電力消費の8割を占めるが、小売電気事業者が扱える再生エネ電気は限られ、電力契約の切り替えだけではスムーズにいかない。

ソニーは以前から再生エネ調達に挑戦してきた。熊本県の半導体工場は屋根に太陽光パネルを取り付けて発電した電気を直接、消費している。「オンサイト型」と呼ぶ方法で、投資回収が終われば電力コストは安くなるが、操業に必要な電気全量を賄えない。

再生エネを使ったとみなせるグリーン電力証書も購入してきた。小売電気事業者から調達した電気を「再生エネ利用」にできるが、発行量が少ない。国が売り出している非化石証書は大量だが、電力会社しか入手できないため証書の活用でも限界があった。

そこで、離れた発電設備から電気を送る「オフサイト型」にも取り組む。20年2月、静岡県内のグループ会社の倉庫屋根(焼津市)に太陽光パネルを設置し、発電したものの倉庫で使い切れなかった余剰電力を工場(吉田町)に届けている。電力系統を使って送電できる「自己託送」制度を利用した。

通常、余剰電力は小売電気事業者に売っているが、自己託送だと発電した再生エネ電気全量をグループ内で消費できる。また、コスト面でも利点がある。工場が求める安価な再生エネ電気は流通量が少ないが、自己託送だとソニーの裁量でコストを抑えられる。「ケース・バイ・ケースだが、自己託送は(電力単価が低い)特別高圧でも現状と遜色のない価格で再生エネ電気を調達できる」(井上氏)という。1日からは愛知県東海市の牛舎の太陽光パネルの電気を30キロメートル離れた工場にも供給する。

さまざまな方法を経験した井上氏は、小売電気事業者に限定している非化石証書の規制改革の必要性を感じている。再生エネを使いたい企業も非化石証書を購入できるようになると、取引が活性化する。企業が発電所と契約するなどの多様な調達が可能となり、再生エネ発電所の新設が促されるためだ。「まずは再生エネの量を増やしてほしい」(井上氏)と訴える。

日刊工業新聞2021年4月1日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

「手段は多様。けど決定打がない」と取材して感じました。記事で紹介した非化石証書は880億kw時/年もあります。ソニーの国内電力消費量の40倍以上です。非化石証書が入手しやすくなると、ソニーはあっという間にRE100達成です。 ちなみに欧州や中国で再生エネクレジット・証書の購入、北米では企業が発電所と直接、契約を結ぶ方法と、地域で主流の手段があります。

キーワード
ソニー

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