「健康志向時代」キリンビールと亀田製菓はどう考えている?
ニュースイッチは3月17日、オンラインイベント「~お酒は飲みたいけど、健康にも気を付けたい~みんなで「罪悪感」を考えよう!」を開催した。
このイベントは1月に連載した「“おいしい”は罪ですか?」のスピンオフ企画。イベントにはキリンビールから、「一番搾り糖質ゼロ」を担当するマーケティング部の北島苑さん、亀田製菓から、昨年までマーケティング戦略部にて「亀田の柿の種」ブランドを担当しており、現在は広報を担当している池ノ上雄樹さん、モデレーターとして連載を執筆した昆梓紗の3名が登壇した。
健康を意識した商品は健康志向の強まりから、食品メーカー各社から発売されている。新型コロナウイルス流行後は「予防」の観点も加わり、消費者からの人気を博している。
ただ、ビールやお菓子は嗜好品だ。おいしさと健康志向を両立させることは技術的にも、メッセージの伝え方も難しい。両社が市況変化をいかに考え、メッセージを打ち出しているのか、当日の様子をレポートする。
昆 以前から、「健康志向」の潮流はありましたが、コロナ禍において大きな変化は見られましたか?
北島 もともと、飲酒の習慣がある人の健康意識は高かったです。ただ、コロナ禍においては運動不足や家飲みでの飲酒量の増加から、糖質ゼロなどの商品が一気に広がった印象です。
また、これまでには無かった「予防」の意味合いが出てきたのは大きな変化だと思います。これまではどちらかというと、健康診断などの結果を見て、糖質オフ・ゼロ系を選ぶ流れでした。そこが、予防的に健康に気を遣うための選択肢として、糖質オフ・ゼロ系が選ばれています。そういった意識もはたらき、エントリー層が30代や20代にも拡がっています。
池ノ上 同じく運動不足からいままで以上に塩分を抑えたいしたいというニーズは間違いなくありました。総じて言えるのは免疫力の向上も含め予防的なニーズの高まりです。
昆 両社とも定番ブランドの派生商品として、健康に配慮した商品(「一番搾り 糖質ゼロ」、「減塩 亀田の柿の種」)を出されています。別のブランドを立ち上げるのではなく、派生商品にした理由はどこにあるのでしょうか。
北島 まず、「おいしい」ことは大前提です。その上で、「一番搾り」であれば、安心感を持ってもらえ、手に取りやすくなるのではないかと思います。また、社内的な話ではありますが、「一番搾り」の名前を使う以上、失敗できないプレッシャーはありました。
池ノ上 同じく味には妥協できないと思っていました。さらに、「健康志向」を打ち出すことで、これまで「亀田の柿の種」に触れてこなかった人々にアプローチできたと感じています。また、自身は食べない主婦の方が家族に向けて購入するなど、食べる方の罪悪感だけだはなく、購入する方の罪悪感も軽減できなのではないかと分析しています。
昆 プロモーションで気を付けていることはありますか?
北島 「通常のビール」と変わらない印象でおいしさを打ち出しました。そこに、糖質ゼロというメッセージを付け加えることで、うれしいニュースとして描きました。糖質ゼロを選ぶことがネガティブな選択にならないことを心掛けました。
池ノ上 「減塩なのにおいしい」をメインのメッセージにしました。当社は店頭での訴求が主になりますので、管理栄養士推奨マークを付けて健康訴求を強めたり、通常の「亀田の柿の種」と並べて販売して食べ比べてもらうような訴求も実施しました。
昆 ここで寄せられた質問に回答していきます。
Q.亀田の柿の種の減塩は30%が限界なのか?
池ノ上 50%などもできなくはありません。実際、テストの時点では、様々な塩分量の試作品を作り食べ比べをしました。そこで味のおいしさとOFF量の数字のインパクトのバランスが良かったのが30%でした。
Q.今後健康志向の分野で組みたい企業は?
北島 業務提携しているファンケルとの研究開発は加速させていきたいです。同社との取り組みはノンアルコールでの分野が中心になると思います。
終始、和やかな雰囲気で進んだ本イベント。最後には北島さんから「亀田製菓さんと一緒に何かやりたいです」という声掛けし、池ノ上さんも「減塩商品を買う人は、機能性ビールや低脂肪牛乳などを一緒に買うことが多いです。ぜひ店頭で一緒に販売するような売り場を作れば親和性はあると思います」と返す場面も。
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