クロームブックの出荷が伸びている。最大の成長要因は?
米グーグルの基本ソフト(OS)を搭載したノートパソコン(PC)「クロームブック」の出荷が大きく伸びている。最大の成長要因は政府が進める教育現場のデジタル化「GIGAスクール構想」関連需要だが、個人向け市場でも徐々に存在感を増している。MM総研(東京都港区)によると、クロームブックの2021年の国内出荷は前年比79・2%増の281万5000台と、ノートPC全体の24%を占める見通しだ。(国広伽奈子)
「2月のノートPC国内出荷台数が過去最高を更新」―。電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめた2月のノートPC国内出荷台数は、前年同月比2・8倍の98万5000台を記録した。うち、薄型軽量のモバイルノートが同5・8倍の56万8000台と急増している。
この要因となったのが、公立小中学校に1人1台の端末を配備する「GIGAスクール構想」だ。MM総研がまとめた同構想のメーカー別シェアは、タブレット端末「iPad」を手がける米国アップルが首位。一方で、OS別シェアはグーグルクロームOSが43・8%と他を圧倒する。
手頃な価格や管理・運用の負担の少なさが、導入台数の多い都市部を中心に支持を集めている。レノボ・ジャパン(東京千代田区)では、教育専用のクラウド基盤とのセット販売が好評。教材やセキュリティーの充実も採用を後押しする。
レノボ・ジャパンのクロームブック販売は大半がGIGAスクール構想向けだが、20年は個人向けも伸びたという。新型コロナウイルス感染拡大でテレワークや家庭学習でのPCの利用機会が増えていることを意識し、手頃に購入できる2台目として支持拡大を狙っている。
PC各社にとって、GIGAスクール構想などを通じてクロームブックの知名度が上がり始めた今回の好機は何としても逃せない。競合各社でも利用者層の拡大や需要開拓に努める動きが活発だ。
日本エイサー(東京都新宿区)は子どもを持つ30―40代を意識し、家庭での利用例を紹介する特設サイトの開設や販促キャンペーンを始めた。これまで比較的若い世代に訴求してきたが、同構想を機に親世代の知名度が高まるとみている。
手頃な価格や小型な製品が多いクロームブックだが、日本HP(東京都江東区)はミドル・ハイエンドの製品に力を入れている。
個人向け市場が想定以上に成長しており、画面サイズの多様化やタッチ操作の強化など機能性を高める製品強化を進めている。
併せて、50人のモニターにクロームブックの使い方を尋ねたウェブサイトも公開。一般的なノートPCと異なる点があることから、利用目的や感想を具体的に示すことで購入を検討しやすくしている。
クロームブック市場は世界規模でも増加傾向でJEITAの調査では21年にノート型の15・6%を占める見通し。しかし22年以降は「20―30%規模で踊り場を迎える」(富士キメラ総研)見方もあり、この水準を超えられるかが今後の争点となりそうだ。