TDKが自動車向けセンシングシステム本格生産へ、年間150万台の出荷目指す
TDKは、開発中の自動車向けセンシングシステム「インホイールセンス」を2025年から本格生産する。水晶などの圧電体に加えられた力を電力に変化するピエゾ素子(圧電素子)を用いた発電とセンシングができる端末をタイヤとホイールの境界部に配置。タイヤの回転で路面から受ける力を利用して発電するため、バッテリーの搭載が不要。リアルタイムに走行状況を感知でき、車の安全性や快適性向上に貢献する。年間150万台の出荷を目指す。
TDKは2019年からインホイールセンス専用端末の開発を進めている。実用化に向け、希望する顧客企業にサンプル品を提供して評価を行う段階に入った。顧客企業のニーズに合わせて端末を開発し、タイヤメーカーやホイールメーカー、車メーカーを中心に拡販する。
インホイールセンス専用端末はタイヤが回転するたびに発電し、時速105キロメートルで直進走行時に平均連続出力1ミリワットの電力を生み出す。TDK技術・知財本部によると、低消費電力のマイクロコントローラーによるセンシングと無線送信を行うのに十分な発電量という。
出力電圧はタイヤ回転周期に合わせて発生し、直進走行時には最大振り幅で約70ボルトの交流(AC)出力が得られる。
端末から得られる波形を解析することで速度の検出や車体の状態、路面の状況など情報収集もできる。収集したい情報に応じて温度センサーや空気圧センサー、加速度センサーなど他のセンサーと併用可能。自動運転車の実現に必要な運転状況の検知に加え、タイヤ保守サービスへの活用、ホイールの動的特性の評価などへの展開を見込む。
日刊工業新聞2021年3月25日