厳冬で石炭火力が再評価?「石炭ガス化複合発電」実用化急ぐ

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IGCCの大型実証が進められる大崎クールジェン

IGCC実用化急ぐ

再生エネの不安

2020年12月下旬から21年1月上旬にかけて厳冬により暖房需要が増え、液化天然ガス(LNG)火力発電所の燃料不足から電力需給逼迫(ひっぱく)を招いた。太陽光発電の出力低下もあり、不安定な再生可能エネルギーに依存するリスクが顕在化した一方、調整力としての石炭火力の役割が再認識された。二酸化炭素(CO2)排出の大本としてやり玉にあがる石炭火力だが、カーボンオフセット技術を組み合わせれば、むしろCO2を減らす潜在力を秘める。

瀬戸内海に浮かぶ島々の中に、ひと際高い棟が建つ施設がある。中国電力とJパワーが共同出資する大崎クールジェン(広島県大崎上島町)だ。ここで石炭ガス化複合発電(IGCC)の大型実証が実施されている。石炭を少量の酸素と熱を加えて蒸し焼きにすることで、一酸化炭素と水素を主成分とする燃料ガスが生成される。この燃料ガスを利用して発電する仕組みだ。

水素専燃へ

Jパワーは石炭ガス化の技術開発に02年から取り組んできた。CO2を分離回収することで、現在は水素濃度85%のガス化に成功している。ゆくゆくは水素濃度100%を目指す。水素専焼タービンは27年頃の開発が見込まれており、「タービンを導入すれば水素専焼に移行できる」(Jパワー)という。

IGCCはCO2を減らす「カーボンネガティブ」への道を開く。水素専焼タービンで発電し、分離したCO2を回収・貯留すれば、CO2排出は実質ゼロになる。この条件で自然由来のバイオマスを混焼すれば、混焼分だけ大気中のCO2を実質的にマイナスにできる。LNG火力は固体のバイオマスを混焼できないが、同じ固体の石炭火力だからこそ可能となる。

Jパワーは竹原火力発電所(広島県竹原市)で10%のバイオマス混焼を実施しており、カーボンネガティブの可能性も探っている。ただ、これはCO2回収・貯留が大前提だ。日本ではまだCO2貯留の適地を調査中の段階で、実現までには時間を要する。

20年7月、梶山弘志経済産業相が非効率な石炭火力を30年までにフェードアウトする方針を表明した。国内の電源に占める石炭火力の比率は約30%で、発電所は約150基。このうち超臨界圧(SC)以下の石炭火力は114基にのぼる。目下、経産省の作業部会で非効率石炭火力の定義などが議論されている。Jパワーも「老朽化した一定の設備は休廃止することになる」(菅野等取締役常務執行役員)と見越す。

ベースロード

石炭火力への逆風は強まっている。脱炭素の流れに逆行するとして、総合商社は海外プロジェクトから撤退。メガバンクは石炭火力への投融資を停止すると表明した。一方でエネルギー安定供給の観点から、ベースロード(BL)電源の役割が再認識されている。国内の1月上旬の電力需給逼迫や、米テキサス州の寒波に伴う停電も、BL電源の不足が根底にある。

カーボンニュートラルを進める中で、電力安定供給との兼ね合いをどうするか。どちらも手抜かりが許されないが、完璧な両立も難しい。いかに最適なエネルギーミックスを導くか、知恵を絞らなければならない。

日刊工業新聞2020年3月17日

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石炭

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