西鉄がJR九州との連携進める、まちづくり推進部長の狙いとは?
西日本鉄道は公共交通分野でJR九州との連携を進めている。福岡を中心に国内最大規模のバス台数を擁する西鉄と、九州全体に鉄道網を敷くJR九州。公共交通の利用促進、MaaS(統合型移動サービス)、新技術活用の3本柱で手を結ぶ。常務執行役員の松本義人まちづくり推進部長に狙いを聞いた。(西部・三苫能徳)
「厳しい環境にある公共交通を持続可能にするためだ。少子高齢化で利用者は減り、運転士ら担い手も集めにくくなっている。これまでマイカーへの対抗という面では鉄道とバスの競争に意味もあったが、パイを取り合える状況でもなくなった。バスと鉄道を一体化した形で連携することが路線維持に最も良い施策だと意見が合致した。一方、利用者が特性や運賃を使い分けできる部分では引き続き競争していく」
―北九州市のJR下曽根駅でJR線とバスとの接続強化を始めて1年たちました。「『下曽根モデル』として乗り継ぎ案内やバス路線の新設など、新技術も入れて連携している。できるだけ同じ料金で早く目的地にたどり着く仕組みにした。新型コロナウイルスの影響で効果を数字で示せないが評判は良い。駅前広場も整備中で今後に期待する。利用者が全体的に増えれば強化や整理の話もできるが、コロナ禍で難しいため次年度も継続的に見ていく。他地域でも挑戦したい。現場を含めて両社で互いにコミュニケーションを取れることが大事だ」
―連携で得たものは何ですか。「事業や人に気付きを与えてくれる。例えば企業文化の違い。鉄道は装置産業で投資が大きく、線路をひたすら走り収益を上げる。他方でバスは小さな投資で必要な場所に持って行ける。JR九州からはバスの機動性を評価してもらっている。当社からすれば、九州全体で捉える鉄道の広域性が見えてきた」
―コロナ禍で厳しい経営環境ですが、連携への影響は。「むしろ進めなければいけない。リモートの進展で出張も通勤・通学も減った。訪日外国人や観光需要も戻るのに時間がかかる。事業を軌道に乗せるための仕組みを変えるイノベーションについて、さらなる協力の必要性を強く感じている」
チェックポイント/新技術確立へ前進
輸送サービスでの提携は2019年10月にスタートした。MaaSでは西鉄とトヨタ自動車が取り組んでいたシステム基盤「マイルート」にJR九州が参画し、同社と宮交ホールディングスによる宮崎での実証につながった。自動運転ではJR九州が列車で、西鉄がバスで実用化に乗り出している。人材不足の解消やコスト低減は共通の課題であり、相互の技術供与などを通じて技術を確立できれば「持続可能な公共交通」に道を開く。