大型液晶の売却中止で露呈したシャープの甘さ

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シャープが、持ち分法適用会社でテレビ用大型液晶を手がける「堺ディスプレイプロダクト」(SDP、堺市堺区)の保有株式売却を中止した。赤字続きの事業を手放して経営負担を軽くする狙いだったが、売却先企業の強い要望により、わずか2週間で撤回することになった。スマートフォン向けカメラレンズ子会社では不適切会計問題も発覚するなど、ガバナンスの甘さが露呈している。(大阪・園尾雅之)

「大型液晶の価格は上昇しているが、それが永遠に続くものではない」。12日の会見で野村勝明社長は中止の理由を明言しなかった。ただ、パネル市況のSDPへの業績影響を冷静に分析した上で、新たな売却先を急いで探す状況ではないとの認識を示した。

取引関係継続

2021年初めからSDP株売却の臆測は流れていたが、売却先や時期など不明な点が多かった。資本関係が解消されても、シャープはSDPからのパネル調達は続ける方針。SDP幹部も「取引関係は継続。発注があれば受ける」と明かす。

SDPはかつてのシャープ工場。世界初の第10世代液晶工場として脚光を浴びたが、過大投資が裏目に出て経営危機の引き金となった。現在は親会社の台湾・鴻海精密工業グループが過半出資しているとみられ、シャープは議決権ベースで24・55%出資にとどまる。

SDPは18年12月期から2期連続で巨額の当期赤字を計上。20年10―12月に設備の減損処理を行ったことで、21年12月期は業績改善を見込む。

中国と消耗戦

コロナ禍による“巣ごもり”需要でテレビの販売が伸び、SDPも3月までは高操業が続くと見られるが、中国企業との熾烈(しれつ)な消耗戦を強いられる点は変わりない。また、パネル用ガラス調達先の米コーニングと契約を巡って対立しているとされ、安定調達に不安を残す。

戴正呉会長は19年夏、SDP株式を買い戻して子会社化する検討を示し、一度は酸化物半導体「IGZO」技術を組み合わせた「強いシャープ」を志向していた。だが、今やいかに経営負担を軽くするかという現実路線を向く。

かたや分社化した液晶事業会社の生産再編が進む。ジャパンディスプレイ(JDI)から取得した白山工場(石川県白山市)は2月に本格稼働し、米アップルのスマホ「アイフォーン」向けの供給を始めた。「亀山第1工場(三重県亀山市)から白山工場に集約」(液晶関連サプライヤー)し、順次稼働率を高める。韓国LGディスプレーの液晶生産撤退に合わせて新規受注を取り込む狙いだ。

亀山持ち直す

亀山第1工場は4月にかけて稼働率が落ちる見通しだが、車載用途を中心に受注を積み上げているとみられ、21年半ばにかけて持ち直す模様だ。亀山第2工場はパソコンやタブレット端末向けを中心に堅調に推移する可能性が高い。

一方、12日にスマホ向けカメラレンズ子会社のカンタツ(東京都品川区)の不適切会計の詳細も明らかにされ、ガバナンスの甘さが浮き彫りになった。19年3月期から3年間で、売上高を約75億円架空計上していた。

足元ではIoT(モノのインターネット)家電を軸にサービス事業の収益力強化を図る。だが戴会長が目指す「ブランドの会社」となるには、まだ道は遠い。


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日刊工業新聞2021年3月16日

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シャープ テレビ

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