3か月で1000台が完売した陰圧テント、実は2度目の開発だったIHIの物語

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陰圧テントとプロジェクトメンバー(左から若井一訓営業グループ担当課長、元森信吾開発グループ主幹、関口重幸氏、深井良和氏)

陰圧隔離室(簡易陰圧テント)

「1000台ぐらいの販売を見込んで2020年6月に発売したが、3カ月ですべて売れた」―。IHIのグループ会社であるIHIアグリテック(北海道千歳市)の若井一訓環境プロジェクト部営業グループ担当課長は、陰圧テントの需要の高まりをこう説明する。

新型コロナウイルス感染症が拡大していた20年3月、陰圧テントの開発が始まった。感染を防ぐには、患者を隔離する場所を室内に用意する必要がある。そこでIHIとIHIアグリテックは陰圧テントを、オゾンとHEPAフィルターを用いた空気清浄機と組み合わせて利用できるようにした。陰圧室を備えていなかったり、不足していたりする医療機関でも容易に隔離環境を整えられる。

感染への不安が高まっていた時期でもあり、元森信吾同部開発グループ主幹は「開発にはスピード感が要求された」と振り返る。当初計画していた約1000台はあっという間に売れた。病院と同様に、クラスター感染の防止が最優先の老人保健施設などで需要が伸びており増産に追われた。

陰圧テントを本格的に展開するのは二度目だ。09年ごろに新型インフルエンザウイルスが流行した際にも、隔離を目的に提供した経緯がある。前回から見直したのが使い勝手だ。20キログラムを超えていた本体の重量を13キログラムに軽量化しており、「女性2人が15分ほどで組み立てられる」(元森開発グループ主幹)という。女性が陰圧テントを準備することが多かったことを考慮するとともに強度も確保した。

同社は医療機器の展開を進めてノウハウを蓄積し、製品などの競争力を磨いてきた。「今後は公衆衛生の観点からも、陰圧テントの導入を広げる」(若井営業グループ担当課長)考え。コロナ禍の収束がなかなか見通せない中で、患者の隔離は引き続き必要で陰圧テントは必需品だ。空気清浄機と合わせた活用で命を守る戦いを支えている。

製品プロフィル

陰圧テントは幅2500ミリ×奥行き1650ミリ×高さ1800ミリメートルで、短時間で組み立てられる。空気循環回数が1時間当たり12回以上、差圧(陰圧度)が2.5パスカル以上で、陰圧隔離テントの条件を満たしている。一方、空気清浄機は幅500ミリ×奥行き183ミリ×高さ650ミリメートルで、飛沫(ひまつ)感染や接触感染対策にも役立つ。

日刊工業新聞2021年2月22日

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