オープンイノベーションに高まる期待!F3D実装協働研究所の次世代モノづくり

大阪大学発コンソーシアムの跳躍

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さらなる省エネルギー社会やスマート社会が訪れる。実現するのは3次元実装技術を用いたパワー半導体やフレキシブルデバイスなどの次世代デバイス。国内企業が多くの技術を生み、育て、強さを誇ってきた分野がこのカギを握る。大阪大学産業科学研究所は2020年1月、「大阪大学フレキシブル3D(F3D)実装協働研究所」を設立した。化学材料メーカーのダイセル、ハンダ材料メーカーの千住金属工業(東京都足立区)、理化学機器商社のヤマト科学(東京都中央区)が出資する次世代デバイスの産学連携拠点だ。技術の社会実装を名に冠し、民間資金を活用する阪大初の形で新たな社会構築をリードする。

次世代モノづくりを実装する、阪大発コンソーシアムの設立

F3D実装協働研究所は国内外の企業や大学と、次世代デバイスに関する共同研究を推進する。技術相談や、製造や評価のための研究所内装置の外部利用も受け付け、広くその門戸を広げている。次世代の産業を担う若手研究者・技術者の育成も重要な役割だ。

これらの活動をより充実し、技術開発を促すため、20年6月には「フレキシブル3次元実装コンソーシアム」を発足。協働研究所に参画する3社に加え、トヨタ自動車やパナソニック、トッパン・フォームズなどさまざまな業種の企業100社以上が参加する大きな枠組みを作り上げた。

大阪大学内組織・他機関との連携とプロジェクト

「大手企業から中小企業までが集まり、次の世代に必要な技術を世界に先んじて開発することを目指してコンソーシアムが発足した」と、F3D実装協働研究所の菅沼克昭所長は解説する。

コンソーシアムは現在、テーマごとに5つのオープンなワーキンググループ(WG)を作り、活発に情報交換を行っている。ここから具体的なテーマが固まると研究開発を深める研究会へと移行する。

ワーキンググループ(大阪大学F3D実装協働研究 所HPより)

ワーキンググループは立ち上げと終了の自由度が高く、新たなテーマの情報交換に向くのが特徴。一方、研究会は会費を集め、より組織だって動くことで着実に成果を実らせる。

すでに「熱計測&熱マネジメント」「IoTセンサ」のWGから二つの研究会が誕生している。4月にはさらに「樹脂の接着界面」と「車載デバイス」をテーマにした研究会が立ち上がる予定だ。

新型コロナウイルス感染症の影響で、活動が制限された2020年の活動初年度。近畿経済産業局の支援もあり、コンソーシアム加盟企業以外も参加できるオンライン公開セミナーを積極的に開いてきた。

「参加者が減っていくと思っていたが、今も参加率は高い。多くの人が先端デバイスに興味を持っている。感染症対策で出張などが難しくなり、いかに外部と交流するか、皆が考えている」(菅沼所長)。

一方、F3D実装協働研究所は技術支援の一環で外部からの設備利用を受け入れている。動作寿命を測定するパワーサイクル試験機や、マイナス70度C~350度Cまで対応する熱衝撃試験機、フィルム材料用の疲労試験機など企業にとって単独導入が難しい装置も多くそろえる。

これまで海外企業や研究機関の利用が多く、菅沼所長は「国内企業にももっと利用してほしい」と訴えてきた。しかしコロナ禍の20年度はさらに利用が停滞したという。

このため、リモートでの実験ニーズに応えられるよう画面共有システムなどの構築も考える。

数多くの試験設備をそろえる

次世代デバイスに関わる技術の情報が集まる「開かれた場」を目指して

幅広い企業の利用を促し、オープンイノベーションの橋渡し機能を果たそうとするF3D実装協働研究所。世界中から次世代デバイスに関わる技術の情報が集まる開かれた場を形成し、新たな産業の展開を図っている。

大阪大学産業科学研究所F3D実装協働研究所とフレキシブル3次元実装コンソーシアムの活動意義や今後の展開について、菅沼克昭F3D実装協働研究所所長に聞いた。

菅沼克昭F3D実装協働研究所所長

―協働研究所の意義は。
 「有機材料と無機材料、金属の技術をすり合わせ、大学の持つ研究力も生かした新しいモノづくりの実現を目指している。日本の素材開発力は強いため、組み合わせることでさらに新しい力が期待できる。パワーデバイスや5G/6Gといった高速大容量通信技術、人工知能(AI)などのオープンイノベーションの拠点として位置付けている。発足から順調な滑り出しの1年だった」

―コンソーシアム発足後の活動について。
 「新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、活動も限られた。しかし、こういうときこそ積極的な情報発信が必要だと考え、20年8月からオンラインセミナーをスタートした。当初は月1回ペースだったが、現在は月に2回。オンラインでなければ隔月でしか開けなかっただろう。高い頻度でイベントを行うことで、普段とは異なる層、日本中によいメッセージを出せている」

―企業の反応はいかがですか。
 「企業はオープンにできる情報をより広く聞いてもらうにはどうすべきか、世界の技術がどう進むかを意識している。この中でコンソーシアムが、新たな交流を生み、開発を進めるきっかけになっている。材料メーカーと部品メーカーは従来から交流があるが、コンソーシアムにはさらに先、最終製品を作るエンドユーザーの声を直接聞ける環境がある」

―4月に新しく二つの研究会が発足します。
 「樹脂の接着界面の研究会では、樹脂と金属の接着が重要なテーマになる。電子部品は銅を使う。このプロセスは未解明な部分が多い。樹脂と銅の接着を重点的に扱い、検査ができるレベルの基準を作りたい。日本のモノづくりの信頼性のために強化しなければならない分野だと考えている」

-自動車分野も注目されます
 「車載デバイスの研究会は、将来の自動運転実現に向け、車内で完結する自動制御に取り組む。従来、安全安心の観点から、車載デバイスは他の電子機器で実績のある製品を応用してきた。しかしこれから求められるのは、ほかにない最先端のデバイス。しかも携帯電話やスマートフォンと比べ、車載用は10年以上の寿命が必要になる。課題を抽出して解決する」

―今後の目標は。
 「協働研究所は大学の組織だが、企業の資金を導入して産学連携での研究・開発を進めている。将来は海外の研究所のように自立できるのがオープンイノベーション組織として望ましい姿だ。新たな技術開発が進み、ビジネスにつながる可能性はさまざまあるため、ハードルを感じることなく新たに働きかけてくれる企業が出てほしい。世界中から多くの企業が集まる場としたい」

幅広い分野・規模の企業が参画し、新たな連携モデルを目指す

4月に発足する樹脂界面の研究会にはダイセルなどの材料メーカーのほか、デンソーや京セラなど約10社が参加する。エポキシ樹脂やフッ素樹脂と銅の接着の仕組み解明などに取り組み、接着の強度向上で信頼性の高い日本のモノづくりをアピールできるようにする。

一方、車載デバイスの研究会にはトヨタ自動車や表面処理薬メーカーの奥野製薬工業(大阪市中央区)、京セラなど約10社のほか、電子情報技術産業協会(JEITA)によるタスクフォースに参加する約10社や宇宙航空研究開発機構(JAXA)も加わる。プリント基板の微細な穴「マイクロビア」の10年以上の耐久性実現や基板のメッキ技術の開発などに取り組む。

F3D実装協働研究所は経済産業省の「J-Innovation HUB 地域オープンイノベーション拠点」の第1回選抜の5大学の一つに選ばれた。さらにコンソーシアムの取り組みは近畿経済産業局の「地域企業イノベーション支援事業」にも採択されている。同研究所を中心としたオープンイノベーションによる連携モデルに、大きな期待が高まっている。

大阪大学フレキシブル3D(F3D)実装協働研究所
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