「自給率が足りない」日本の半導体。台湾・TSMCがつくばに拠点で流れは変わるか?
半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が先端半導体製造の技術開発拠点となる子会社を茨城県つくば市に設立することを決めた。1月には台湾メディアが日本での新工場建設を報じたが、これまで水面下で日本への誘致を進めてきた経済産業省もTSMCの動きを注視してきた。日本の製造装置・素材メーカーとの協業も含め、今後の展開に注目が集まる。
「国内外の企業と連携し、先端的な半導体を国内で製造する技術の確保を目指す考えに変わりない」。梶山弘志経済産業相は9日の閣議後会見でTSMCへの直接の言及は避けつつ表現した。
デジタル化の進展で需要拡大が続く半導体を巡っては近年、米中の技術覇権争いやコロナ禍での需給変動などによる不透明な情勢も渦巻く。足元では自動車向けの供給不足でメーカーによる減産にも至り、半導体メーカーの動きに世界的な関心が高まっている。
経産省は海外勢と比べて「自給率が足りない」(ある経産省幹部)状況を打開するため、海外との連携や支援に向けて動いてきた。TSMCに限らず他の半導体メーカーも含め、水面下でのアプローチを重ねて可能性を模索してきた。
今年に入り、台湾メディアからTSMCによる日本での新工場建設の計画が報じられた。米アリゾナ州での工場建設計画も進む中、別の経産省幹部は「一段飛ばしで工場建設から入ることはない」とした上で「日本にある素材、装置関連の土台をいかに生かしていくか」と口にした。
今後、TSMC側の具体的な動きが進むにあたって日本の製造装置・素材メーカーとの協業体制がどう形成されるかが重要になる。経産省は2020年度第3次補正予算で900億円を積み増し、先端半導体に関する製造技術の開発支援を強化する動きも進む。一方で製造装置・素材メーカーの強みを生かした基盤の構築やデジタル化と切り離せない分野の日本国内での需要の広がりが進まなければ、「半導体関連産業が本当に空洞化してしまう」(経産省幹部)との危機感もにじませる。
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