二度の奇跡が重なり誕生した「ペニシリン」、80年の時を経て再びコロナワクチンは歴史に名を刻むか
20世紀最大の発明の一つとされるペニシリンは、二度の奇跡が重なり誕生した。英国の細菌学者アレクサンダー・フレミングは、くしゃみをしたら細菌培養中のシャーレに鼻水が飛び込み、濁った培養液が透明になるのを発見する。細菌を殺菌する酵素の存在を推定し、リゾチームと名付けた。
二度目の奇跡はフレミングがブドウ球菌をシャーレで培養中、家族と長旅に出た時に起こった。研究室に戻るとシャーレに青カビが繁殖し、周囲にブドウ球菌が生えていない。リゾチーム発見の記憶がよみがえり抗菌作用に気付く。ペニシリンは青カビの学名ペニシリウムにちなむ。
2月12日は「ペニシリンの日」。オックスフォード大学付属病院が世界初の臨床実験に成功して80年になる。フレミングがペニシリンを発見し、抗生物質として使われるまで実に10年を要した。
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が、日本でも医療従事者や高齢者などから始まる。1年弱という驚異的なスピードで開発されたワクチンだが、世界で変異種が次々と発見され一部はワクチンの効果が低減するものも現れている。ワクチン接種も時間との競争。ペニシリン同様一人でも多くの命を救いたい。
日刊工業新聞2021年2月12日