コロナ禍で「スマートグラス」による遠隔作業支援ニーズが増加!ウェアラブル市場が加速

おすすめ本の抜粋「トコトンやさしいウェアラブルの本 キーテクノロジーと活用分野がわかる!」

  • 2
  • 7
「エースリアルforドコモ」の利用イメージ(ドコモ提供)

コロナ禍で突然広がり始めた業務用スマートグラス

2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症による世界規模でのパンデミックの結果、国内では非常事態宣言が出され、人々の暮らしや仕事は一気に変容しました。巣ごもり、テレワークが標準となり、バーチャル化、リモート化が進みました。これは実世界指向のウェアラブルとは一見反対方向への進化です。では、コロナ禍によってウェアラブル産業が衰退したかというと、そうではありません。逆に、スマートグラスの需要が顕著な伸びを見せました。

特に、コロナ禍によって、スマートグラスを用いた遠隔作業支援へのニーズが高まりました。コロナ禍の中、熟練者が出勤できなくなりましたが、スマートグラスを使えば遠隔で現地の様子を見ながら、作業員に指示を送ることができます。また、図面や文字を送ってスマートグラスに映すこともできます。カメラの映像をキャプチャーして、その静止画に矢印や丸印などの指示を書き込んで送り返すというのが典型的な使い方です。

スマートグラスを用いた遠隔作業支援はこれまでも広く使われており、産業用途としてのスマートグラスの使い方としては最も浸透していました。システムが動き、通信さえつながれば、あとは人間同士のコミュニケーションで使いこなせるものだからです。唯一の課題はアプリケーションの設定と使いこなしでしたが、ZOOMなどのリモートツールが普及し、ユーザが使用に慣れたことで解消されました。遠隔会議でこれらのツールを頻繁に使うようになったためです。

その他にも、業務の教育・研修用途でもスマートグラスがよく利用されています。また、巣ごもり時の映像作品などの視聴の目的でも需要があります。ただし、スマートグラス自体の課題はまだまだあり、今後のデバイスの進化が望まれています。

新型コロナウイルスの早期発見にウェアラブルを有効活用

新型コロナウイルスの早期発見にスマートウォッチやスマートリングなどのウェアラブルデバイスの活用が有望視されており、世界中でプロジェクトが立ち上がっています。新型コロナウイルスの早期発見は社会的ニーズが高く、さらに生活全般にわたる人々の生体情報のモニタリングにより解決できる可能性が高いのです。まさにウェアラブルセンシングが有効な分野であり、今後データが蓄積されることでより精度が高まる可能性があります。

標準的なアプローチでは、FitbitやApple Watchなどの、ポピュラーかつ高性能な生体センサを備えたスマートウォッチを使用します。脈波(心拍)や血中酸素飽和度の測定、特に睡眠時のモニタリングを行うアプローチが多いようです。例えば、デューク大学のCovidentifyプロジェクトでは、Fitbit、Garminのスマートウォッチを利用して、睡眠パターン、酸素レベル、活動量、心拍をモニタリングしています。また、オーストラリアのセントラルクイーンズランド大学のプロジェクトでは、米国のベンチャー企業・Whoopのスマートバンドを用いて睡眠時呼吸数をモニタリングします。スタンフォード大学は米国の医療研究機関のScrippsResearchと提携して、Fitbitを用いて心拍数をモニタリングし、感染と心拍数上昇の関連性を調べています。ノースウェスタン大学と米国のベンチャー企業は、のどにセンサデバイスを貼り付けて咳、呼吸、心拍、体温を24時間監視することで早期発見を試みています。他にも同様のアプローチを行っている研究機関・医療機関は多いでしょう。

一方で、新型コロナウイルスの早期発見には、スマートリングを用いるアプローチがいち早く成果を上げています。ウエストバージニア大学医学部(WVU)、ロックフェラー神経科学研究所(RNI)、フィンランドのスタートアップOuraは、スマートリングOura Ringを用いた共同研究を行っており、発症する3日前に90%の精度での検出が可能と発表しています。指輪型デバイスでいち早く成果が上がったのは、装着負担の少なさ、指先での血流測定の精度、Oura Ringが備える心拍・体温・加速度の計測機能が偶然にもコロナ検出に向いていた点が要因だと推定されます。
(「トコトンやさしいウェアラブルの本 キーテクノロジーと活用分野がわかる!」p.108, 118より一部抜粋)

書籍紹介

スマートウォッチに代表されるようなウェアラブルは、コンピュータの小型化により実用的な製品が数多く発売され、日本では産業用途での利用が広まっている。ウェアラブルの仕組み・技術や出来ること、効果的な使い方などがこの一冊で理解できる。

書名:トコトンやさしいウェアラブルの本 キーテクノロジーと活用分野がわかる!
 編著者名:塚本昌彦
 判型:A5判
 総頁数:160頁
 税込み価格:1,650円

執筆者

塚本昌彦(つかもと・まさひこ)
 神戸大学大学院工学研究科 教授(電気電子工学専攻)
 NPOウェアラブルコンピュータ研究開発機構 理事長
 NPO日本ウェアラブルデバイスユーザー会 会長
 NPOウェアラブル環境情報ネット推進機構 理事
 ウェアラブルコンピューティング、ユビキタスコンピューティングのシステム、インタフェース、応用などに関する研究を行っている。応用分野としては特に、エンターテインメント、健康、エコをターゲットにしている。
 2001年3月よりHMDおよびウェアラブルコンピュータの装着生活を行っている。

販売サイト

Amazon
 Rakutenブックス
 日刊工業新聞ブックストア

目次(一部抜粋)

第1章 注目が高まるウェアラブル
 ウェアラブルとは/PC、スマートフォンとの違い/ウェアラブルに関わる産業 など

第2章 ウェアラブルでできること
 運動や睡眠の時間を管理/感情をトラッキングする/現場での作業を支援する/業務を管理する など

第3章 さまざまな形のウェアラブル
 眼鏡型デバイス/腕時計型デバイス/ヒアラブル/帽子型デバイス/ウェア型デバイス など

第4章 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)
 小型HMDの仕組み/シースルーHMDの仕組み/網膜投影型HMDの仕組み/HMDの焦点深度 など

第5章 ウェアラブルを支える技術
 人間を対象にしたセンサ/電気を通す糸と布/計算能力を左右するプロセッサ/AR物体の表示に欠かせないSLAM/センサからデータを収集する/情報を入力するためのインタフェース など

第6章 ウェアラブルの利用と安全
 注意の転導が起こることを理解する/物理的な危険に配慮する など

第7章 ウェアラブルを活用する場面
 ヘルスケア現場での利用/フィットネス・スポーツ分野での利用/工場や保守点検の現場での利用/物流現場での利用/警備現場での利用 など

第8章 ウェアラブルの新しい展開
 AR、VRとウェアラブル/人工知能(AI)を利用したウェアラブル/ロボティックスとウェアラブル/身体がインターネットにつながる(IoB) など

関連する記事はこちら

特集