車室空間の次は「スマートシティー」に!トヨタ紡織社長が語った競争戦略
自動運転やコネクテッドカー(つながる車)といった次世代技術競争や、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に伴う電動化の加速など「100年に1度の大変革期」に直面している自動車産業。ここに新型コロナウイルス感染症という新たなリスクが加わり、業界を取り巻く流れはより激しさを増している。自動車・部品メーカーは生き残りに向けどんな手を打つのか。各社のトップに聞く。
―コロナ禍で環境が大きく変わりました。
「従業員の危機意識が変化し、これまでできていなかったことに取り組んでくれた。海外での生産切り替えではカメラなどを活用して遠隔指示するだけでなく、現地に行くよりもきめ細かい部分まで見られるようになった。一方で考え方や理念を生産に落とし込むなどは現地現物でないとできない。現地リーダーの人材育成など、やるべきことの学びが非常に多かった」
―生産面のデジタル変革を進めています。
「国内の主要工場は生産台数や品質、設備の情報などの見える化が進んできた。最近は大雪など工場周辺の状況も分かるようになり、稼働状況が把握できるようになった。今後は海外工場や関連会社、仕入れ先をどうリンクしていくかがテーマだ。海外工場の生産や品質情報については2―3年で順次、整備できるのではないか」
―トヨタ自動車以外への拡販戦略は。
「スズキやマツダといったトヨタとの提携先を中心に、積極的に営業活動したい。各社の仕入れ先とも連携が必要になるだろう。拠点など互いの経営資源を有効活用して、得意な所を生かしながらシナジーを上げていくことが重要だ」
―次世代車向けの展開は。
「2025年以降の自動運転を見据え、センサーやアルゴリズムの領域を強化する。(トヨタグループ各社と共同開発する次世代車室空間の)『MX191』を軸に、いろんなシステムを提案している。トヨタの電子プラットフォームとリンクしながら、どうサプライチェーンを押さえるかは今後の大きな課題だろう。まずは車室空間だが、今後はスマートシティーにおける家や都市の空間まで視野を広げ、競争力を強化して実現したい」
―新規事業の進捗(しんちょく)は。
「高出力リチウムイオン電池は、21年度中に量産レベルでの生産力を立ち上げたい。20年度中に量産工程で作ったサンプルの完成を目指す。また植物の成長を促進する起潮力の研究は徐々に実証試験が始まっている。二酸化炭素削減に寄与できるのではないか」
記者の目/“稼げる体質”定着が課題に
コロナ禍がなければ売上高1兆4000億円、営業利益700億円の目標達成も間近で、企業体質の強化は徐々に成果が上がっている。「インテリアスペースクリエイター」として、車室空間をトータルで手がける構想を実現するには、きちんと稼げる体質を定着できるかが課題だ。もう一段の企業変革がカギとなる。(名古屋・政年佐貴恵)