科学はコロナにどう立ち向かう?大学10兆円ファンドの行方は?萩生田文科相と井上科技相に聞く

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超スマート社会「ソサエティー5・0」の実現に科学技術は大きなエンジンとなる。文部科学省や内閣府は科学技術政策の目玉施策となる10兆円規模の大学ファンドの創設や新型コロナウイルス感染症への対応策となる研究活動のデジタル変革(DX)などに取り組む。科学技術力を向上し、世界での相対的地位が下がりつつある日本を再構築できるのか。萩生田光一文部科学相と井上信治科学技術担当相に2021年の重点施策を聞いた。

インタビュー/文部科学相・萩生田光一氏

文部科学相 萩生田光一氏

公的投資で下支え

―10兆円規模の大学ファンド創設が21年の目玉施策です。

「各国はイノベーションへの投資を強化しており、公的投資による科学技術活動への下支えが必

要。若手研究者の育成、世界レベルの研究大学の共用施設の整備などを通じ、日本の研究力を向上したい。真のイノベーションエコシステムの構築を狙う。運用方針や支援対象学校の選定などの仕組みをすみやかに整備したい」

―ニューノーマル(新常態)に、科学技術で貢献できることは。

「研究施設・設備のリモート化やスマート化、高品質の研究データの収集・共有や人工知能(AI)によるデータ駆動型研究を進める。さらに情報インフラとして、学術情報ネットワーク(SINET)やスーパーコンピューター『富岳』を整備・活用するなど、研究活動のニューノーマルを実現したい」

―AIやビッグデータ(大量データ)で材料開発を進める「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」が注目されています。

「政府で策定中のマテリアル戦略の中で、材料開発を高速で効率的に進めるMIが重要な論点となっている。文科省は全国の最先端共用設備が創出するマテリアルデータを蓄積できる基盤の整備や、全国施設のデータを集約・管理・共有する中核拠点の形成などに必要な経費を計上している。データを利活用できる人材の育成も急務だ。世界と勝負できる体制を構築したい」

―宇宙開発が大きく盛り上がっています。

「20年には小惑星探査機『はやぶさ2』の地球帰還など喜ばしい宇宙イベントが多くあった。はやぶさ2で培った技術を火星衛星探査などの次期宇宙探査に生かしていく。宇宙開発の成果は国民の暮らしに還元されるべきだと考えている。宇宙科学の潜在力を国民に分かりやすくアピールしたい」(冨井哲雄)

インタビュー/科学技術担当相・井上信治氏

科学技術担当相 井上信治氏

社会課題解決に「総合知」

―科学技術の新しい5カ年計画『第6期科学技術・イノベーション基本計画』が4月に始まります。

「第6期計画では社会システムを変えることが重要になる。環境問題や少子高齢化などの社会課題の解決に向け、大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発事業『ムーンショット型研究開発制度』などを進め、自然科学と人文・社会科学を合わせた『総合知』の活用を盛り込みたい」

―研究分野でデジタル化が進んでいます。

「ウイルス情報や遺伝子変異など研究データを共有することで、新型コロナの研究が加速している一方、信頼性のないデータを使った論文が撤回される問題も起きている。研究成果の共有化やデジタル化を進めるには適切なデータ管理が重要。関係各省と研究データの保存や共有、スーパーコンピューターといった情報インフラの整備などを進めている」

―政府の材料開発の方針などを示した「マテリアル戦略」の策定が進められています。

「マテリアル分野は日本の科学技術を支える基盤技術。リチウムイオン電池や青色発光ダイオードなど多くの技術革新を生み出し世界の経済・社会を支えてきた。20年度内の策定を目指している」

―日本の宇宙開発の方向性は。

「基本方針『宇宙基本計画』の実行に向け、縦割り行政を排除し政府一体で取り組む。各省連携での衛星開発や実証体制を20年度内に構築し、安全保障を含めニーズを先取りした革新的な衛星開発を行う。またスペースデブリ(宇宙ゴミ)対策など宇宙活動の新しいルール作りで、日本が国際的な議論を先導できるよう取り組む。日本の存在感を示したい」(飯田真美子)

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