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経産省が「次世代コンピューティング」のデバイス試作拠点を整備。日本企業の競争力強化へ

経済産業省は次世代コンピューティング関連デバイスの試作開発拠点の整備に乗り出す。デジタル変革(DX)の加速に伴う新たな情報処理技術確立への課題に対し、産業技術総合研究所を核にオープンイノベーション拠点を構築。産学官が一体となって研究を実施できる環境を整え、国内企業の産業競争力強化や海外企業を巻き込んだエコシステムの形成を目指す。

産総研を軸とした拠点では、将来の情報処理基盤を支える量子コンピューティングやスピントロニクス(電子の電荷とスピンを利用するエレクトロニクス技術)などに関連する試作開発機能を中心に整備する。中小企業を中心に1社単独での構築が難しい研究体制の構築に関し、産総研がつなぎ役となって重点基盤領域における共同研究の実施を推進する体制を確立する。

2021年度以降、産総研内に必要な設備の導入やクリーンルームなどの設備改修などを順次進めていく。次世代コンピューティングに必要な量子デバイスや異種材料を積層した各種デバイスなどの試作開発が可能な基盤を構築する。基礎研究から技術実証まで一気通貫で展開し、国内外の企業による積極的な投資や研究者の参加を呼び込む。

通信端末の高度化や自動運転の普及、工場のスマート化などの実現には情報量増大やリアルタイム性の処理など、より高度な対応が求められる。次世代コンピューティングのデバイスやネットワークに関連する基盤開発拠点構築に向けては、経産省が20年10月に産総研内に「新原理コンピューティング研究センター」を設置するなどの動きを進めている。

デジタル関連の消費電力は30年に現在の約36倍となる年間1兆4800億キロワット時になると見込まれる。政府が掲げる温室効果ガス排出量実質ゼロの実現に向け、大量の情報処理でも省エネ化可能なハードウエアの基盤技術開発を進める。

日刊工業新聞2021年1月13日

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