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TPPでビジネスはこう変わる!中小企業にも恩恵

「日本にいながらにして安心して海外展開できる」
 
 **「地方企業の仕事外資に奪われる?」−政府が懸念一蹴
 【政府調達】
 TPP協定では、各国GDP(国内総生産)の2割以上を占める政府調達市場に関する新たな規定も設けられた。政府機関による物品の調達や公共事業の発注額が一定規模以上の場合は、外国企業にも入札を開放するルールが盛り込まれた。日本はすでにWTOの政府調達協定でこうした措置を講じているが、TPP参加国の中ではマレーシア、ベトナム、ブルネイの3カ国にとって初の市場開放となる。
 
 【攻めの分野】
 一方で、政府が火消しに躍起なのは、日本の地方企業が外資に受注を奪われるのではないかとの懸念だ。市場の対外開放が進めば、「地元の食材利用を定めた地方自治体の条例がTPP違反になるのでは」といった報道もある。

 政府がこれらを「全くの俗説」と一蹴する根拠は、TPP協定において日本はすでにWTOで約束している調達額および調達対象機関を変更していない点だ。例えば建設・サービス業の場合、中央政府は6億円、地方政府(47都道県と政令市)は20億2000万円を超える場合は入札を実施しなければならないが、TPP協定においてもこの水準は維持される。

 むしろ日本にとって追い風なのは新規に門戸開放するマレーシアなど3カ国以外にも商機が広がる可能性があることだ。チリやペルーは調達基準額の引き下げを約束。米国は対象機関として航空宇宙局(NASA)を追加したほか、豪州の交通安全局やカナダの社会資本庁、シンガポールの国立図書館も政府調達の対象になるという。すでに市場を開放している日本にとっては「守り」ではなく「攻め」の分野となりそうだ。
(文=編集委員・神崎明子)
日刊工業新聞2015年11月2日付日刊工業新聞中小・ベンチャー・中小政策面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
TPPの合意内容は30項目。政府が公表した資料だけでは、意義や何を意味しているのか読み取ることは困難です。今後全国各地で説明会が開催されるので足を運ばれることをお勧めします。

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