激動の時代にキャリアアップに成功する人たちの共通点

ビズリーチ・多田洋祐社長インタビュー

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個人が主体的にキャリアを形成する重要性が高まっている(写真はイメージ)

個人が主体的にキャリアを築く必要性が叫ばれている。終身雇用や年功序列といった従来の日本型雇用慣行は限界が指摘されており、企業に依存したキャリア形成は大きなリスクを伴うからだ。新型コロナウイルス感染症の拡大による社会情勢の変化は、それに拍車をかける。ではキャリアを自ら形成・向上していく上で必要な取り組みは何か。転職サイトを運営するビズリーチの多田洋祐社長に聞いた。(聞き手・葭本隆太)

キャリアの「健康診断」をしよう

―コロナ禍は個人のキャリア観にどのような影響を与えていますか。
 企業に依存したキャリア形成では駄目だと危機感を抱く個人が増えました。ビズリーチの調査ではコロナ禍によって6割の人にキャリア観の変化が生じており、そのうち9割が「自律的にキャリアを形成する必要があると感じた」と答えています。個人によるキャリア形成の必要性は従前から指摘されていましたが、2019年5月に経団連の中西宏明会長やトヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用の限界」に言及したことも影響し、雇用慣行が大きく変わり始めたことで、その重要度が増しています。コロナ禍がその動きをさらに加速させています。

―キャリアを主体的に形成する上で重要な取り組みは。
 定期的な“健康診断”だと考えています。労働市場の中で自分自身がよりよい仕事を担えているのか、また、自分自身のなりたい姿に向かっているのか、その現在地を知るということです。それを知った上で、会社の中で改めて挑戦する内容や転職の可能性などを考えるべきです。

ビズリーチの多田洋祐社長

―具体的にはどのように行動すればよいですか。
 まずはキャリアの棚卸しです。500文字でいいので、自分が担ってきた仕事をテキストに落とし込み、それを客観的に見ることです。合わせて人の話を聞くことも大切。社内の信頼できる上司や、会社を卒業して転職した先輩などでもよいですが、求人を紹介してくれるヘッドハンターは重要な選択肢だと思います。労働市場をよく知るプロを「かかりつけ医」のように持っておくことは大事です。

我々のサービスを含めて多様な(転職支援)サービスがありますが、それらに登録することで(自分の経験や実績などに対する)求人オファーの有無が分かります。仮にオファーがなければ、市場に必要とされていない危険な状況だと知ることができます。一方でオファーがあれば、その内容を聞くことで自分自身が今、担っている仕事の価値を確認できます。そうして(たとえ転職しなくても)納得した上で仕事をすることが大事だと思います。

―棚卸しでは自分が担ってきたプロジェクトの内容や実績を書き出すイメージでしょうか。
 それに加えて、定性的に自分が働く上で大切にしていることの言語化も大切です。仕事に対する価値観は働き続けたり、(結婚や子育てなどの)ライフイベントが発生したりすることで変わります。それを確認しながら今の仕事に価値を見いだしたり、次の会社を選ぶ基準を決めたりすることが大事です。

(キャリアを書き出す)履歴書や職務経歴書はせめて1年に1回は更新することを推奨します。年収が高い人ほど履歴書の更新頻度が多い傾向を示す調査結果もあります(下グラフ)

副業には懸念も

―キャリアアップに成功している人たちに共通点はありますか。
 希少性の高い専門性を持っていると大きいでしょう。これからは専門性が求められる時代で、「営業」や「経理」など多様な職種がある中で、「何でもできます」はある意味で「何にもできません」と同義になってしまいます。また、変化できる素養も重要。転職先でそれまでの経験は生かすのはもちろん大切ですが、それを食い潰して終わりではいけません。新しい職場でさらにキャリアを向上させる意欲を常に持ち、学んで変わり続けられる人はどこでも活躍しています。

―キャリア形成の方法として副業という選択肢が出てきています。
 (ビズリーチがマッチングに携わっている副業案件では)30―50代の一定の経験を持つビジネスパーソンが応募しています。本業を辞めずにキャリアアップに挑戦できるよい機会になっています。ただ、取り組む目的を明確にせず、色々と手を出してしまうと、本業がおろそかになり、あげくキャリアの迷子になる懸念が出てきます。仕事を選ぶ上での一本の筋を考えることは重要です。

優秀な人材を獲得する方法

―企業側が優秀な人材を獲得するために大切な取り組みを教えてください。
 究極は「従業員満足度」を上げることです。「採用は採用」と分けて考えてはいけません。企業経営において人材をどう活用しているのかを人材側は見ています。(退職者が辞めた企業の職場環境などに関する評価を書き込む)口コミサイトも隆盛となっており、これからもどんどん(職場環境などは)可視化されていきます。商品のマーケティングでは、買ってくれた人が満足するとその商品の評判は口コミで広がります。それと同じように、(退職した)卒業生たちが自分のキャリアを実現できる満足度が高い会社だと感じていれば、それがめぐりめぐって人材採用の力に反映されます。

―採用手法に絞って考えた場合はいかかですか。
 ダイレクトリクルーティングの導入です。企業が欲しい人材像をしっかりと定めて主体的・能動的に採用活動をしていくということです。団塊ジュニア世代が30代で、供給サイドの方が多かったかつての転職市場と現在は違います。企業は「選考」よりも「口説く」スタンスに変えないと優秀な人材はまず入社してくれません。

―ダイレクトリクルーティングの力を高める方法はありますか。
 経営陣が意思を持つことは一丁目一番地です。例えば、役員でも採用の前線に出るとよいでしょう。実際に役員が直接口説きに行くことで優秀な人材の採用に成功している企業もあります。

―優秀な人材を副業の枠組みで活用する動きも出てきています。
 外部の知恵を借りる手段として大企業でも取り入れるケースが出てきています。起業家を募り、資金を提供して一緒に新規事業を創出する「アクセラレーションプログラム」の導入と並ぶ手段と言えます。特に足元では企業のデジタル化を推進できるDX人材は需要が強いです。(副業人材を活用する場合は)任せる業務を明確に切り出すことが重要になります。

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