日本でもコロナワクチン接種開始!コールドチェーンの備えは万全か

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国内では一部の医療従事者に2月下旬から新型コロナウイルスのワクチン接種が始められるよう準備が進んでいる。ワクチン接種の課題となっているのが、接種会場までワクチンを輸送するためのコールドチェーンの実現とワクチンを低温保管する製品の確保だ。政府は、昨夏から関係企業、団体とワクチンの供給網づくりと保管する製品の量産体制を推進してきた。ワクチンの安定供給に向け、行政、企業、医療機関の連携が進む。

低温冷凍でワクチン保管

現在、日本政府が想定しているファイザー製のワクチンの輸送方法は、輸入したワクチンを倉庫の低温冷凍庫で保管した後、ドライアイスを詰めた保冷ボックスに詰め替えて接種会場まで輸送する方法だ。接種会場では、低温冷凍庫を設置できない場合は保冷ボックスで保管することを想定している。

政府は、ワクチンの接種会場となる医療機関や保健センター、公民館などで、ワクチンを低温保管できるよう1万台以上の低温冷凍庫の確保を目指している。確保した低温冷凍庫は、自治体に人口を基に割り当てる方針。

米ファイザー製ワクチンを保管できるマイナス70度Cに対応する低温冷凍庫と米モデルナ製ワクチンを保管できるマイナス20度Cに対応する低温冷凍庫の確保を進める。

一部の医療従事者には、2月下旬から先行して接種する計画で、早ければ1月中にも低温冷凍庫を接種会場に配備する。自治体の中には独自に低温冷凍庫を用意する動きもあり、東京都墨田区は新たに低温冷凍庫1台を購入した。墨田区保健所の西塚至所長は「ワクチン接種にすぐ対応できるようにした。すべての接種会場に低温冷凍庫を用意することはできないので、1台でも多い方が良い」と話す。

厚生労働省は、接種会場で保冷ボックスを使用してワクチンを保管する際、ドライアイスを詰め替えることで「10日間程度は保管できる」と説明する。

電源不要、長期間維持

ドライアイスは広く流通している角形ドライアイスでは十分に冷却できないため、厚労省はより冷却能力が高いペレットドライアイスの使用を検討している。しかし、ペレットドライアイスは流通が限られているため、供給不足が懸念されている。

ドライアイスメーカー大手の昭和電工ガスプロダクツ(川崎市幸区)は「政府から増産も含めた安定供給について要請を受けている。可能な限り対応したい」と要請に応える方針を示す。

スギヤマゲンが開発した角形ドライアイス対応の高性能断熱ボックス

角形ドライアイスでマイナス70度C以下を長期間維持できる保冷ボックスの開発も進む。バイオ医療機器の製造・販売を手がけるスギヤマゲン(東京都文京区)は20年12月、ワクチンを低温で保管・輸送できる断熱ボックスを開発した。電源は必要なく、角形ドライアイスだけでマイナス70度C程度を12日間維持できる。同社機能容器事業部の藤井健介部長は「角形ドライアイスでは業界最長」と話す。

保冷ボックスは、高性能真空断熱材を搭載し、外装にナノサイズの細孔を持つ高断熱エアロゲルコーティング生地を採用したことで断熱性能を高めた。内部は熱伝導性の高いアルミ素材を使用し、均一に保冷できる構造にした。

電源が必要ないため「ワクチンを保管する施設での緊急時のバックアップにもなる」(藤井部長)と期待。2月から医療機関や自治体などへ販売する。

国民に届け―官民連携

低温冷凍庫の国内メーカーも政府の要請に応え、昨夏から量産体制に入っている。国内市場でシェアの過半を握るPHCホールディングス(HD)は、2020年8月から段階的に生産量を高めている。同社の中村伸朗執行役員は「昨春以降、製薬や物流などの企業から700リットル程度の大型冷凍庫の注文が増えた」と話す。

政府は同社の設置が容易な80リットル程度の小型低温冷凍庫を確保する方針。80リットル程度の小型低温冷凍庫1台で約1万7000回接種分のワクチンを保管できる。低温冷凍庫を生産する群馬工場(群馬県大泉町)では、1月から24時間体制を取り、「通常時の2倍程度を生産する」(中村執行役員)。従業員を通常時の1・5倍程度に増員して対応する。

PHC HDは1月から生産量を2倍に引き上げる

ツインバード工業も政府の要請を受け、自動車用プラグを搭載した25リットルタイプの低温冷凍庫を量産する。モデルナ製ワクチンのトラック輸送を想定しており、マイナス40―10度Cに対応する。

今後、国民にワクチンを安定供給するため、官民の連携が一層重要になる。

データ/ワクチン確保、本格化

新型コロナウイルスのワクチンの開発段階から、先進国を中心にワクチンを確保する動きが本格化している。既にワクチンの接種が始まっている米国、英国、感染者が急増しているインド、欧州連合(EU)などでは複数の製薬企業と契約を結びワクチン供給を受ける。

発展途上国にワクチンを供給する取り組みも進む。世界保健機関(WHO)などが主導する「COVAX(コバックス)ファシリティー」では、高・中所得国が資金を拠出して自国用のワクチンを確保すると同時に、低所得国への適切なワクチン供給も行う。

日本政府は米ファイザー、英アストラゼネカ、米モデルナの3社から合計2億9000万回(1億4500万人)分の供給を受けることが既に決まっている。医療従事者や重症化リスクの高い高齢者、基礎疾患を持つ人から優先的に接種する。

KEYWORD・コールドチェーン

低温での管理が必要な製品を冷蔵、冷凍した状態で目的地まで配送する流通システム。倉庫やコンテナ、トラックなどで低温を保ったまま保管・配送することで劣化を防ぐ。配送物は、温度センサーを付けて監視する。低温管理が必要な配送物は、医薬品、冷凍食品、生鮮食品など幅広い。

新型コロナウイルスのワクチンは、米ファイザー製がマイナス70度C程度、米モデルナ製がマイナス20度C程度で管理する必要があり、高度な管理体制が求められる。

日刊工業新聞2021年1月1日

キーワード
新型コロナ ワクチン

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