企業や学校、大使館にも設置!サウナビジネスが今熱いワケ

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サウナのイメージ(image by LillyCantabile from Pixabay)

今、サウナがアツい。サウナは世界的に知られているフィンランド語だ。そのサウナが日本のメディアで頻繁に取り上げられるようになり、ビジネス界や芸能界でもサウナをこよなく愛する「サウナ○○」を公言する人が増えている。今月17日には、サウナは国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されている。

日本の風呂と同じで、フィンランドにはどこの家にもサウナがある。集合住宅や高齢者施設には共用サウナがあり、職場や学校にあることも珍しくない。サウナを中心としたコテージを所有している人も多く、550万人の人口に対して300万以上のサウナがあると言われている。国民の9割以上の人たちが週に1度はサウナを楽しみ、かつては出産も、亡くなった後の遺体を清めるのもサウナだったという。

職場にもサウナがあるのは、従業員のウェルビーイング(幸福・福利)の一環でもあるが、おもてなしの場としての意味もある。企業によっては湖畔や眺めの良い屋上にこだわりのサウナを備えている。皆が裸で一緒に入るのは難しい時代になってきたが、水着を着用したり、男女を分けたりして、熱くなった石に水をかけてロウリュ(蒸気)と会話を楽しむ。

実際、私が勤める大使館でも外部の客を招いてのサウナパーティーを開催している。サウナ外交と呼んでいるが、招待客と一緒にサウナに入り、ラウンジやベランダで涼みながら軽く飲食を楽しむ。サウナの中では洋服だけでなく肩書もメンツも取り払って誰もが平等になると言われ、サウナパーティーをすると不思議なことに心の距離が近づく。かつて政治の重要局面でもサウナは陰の立役者となり、裸の付き合いがソ連との関係向上や国内政治の駆け引き決着をもたらしたと聞く。

【熱を帯びる新ビジネス】

生活に当たり前にあるサウナだが、最近ようやくビジネスの可能性が認識されるようになった。廃れていた公衆サウナも、レストランやカフェが併設されたおしゃれな施設に生まれ変わり、都会や若い人らの間で人気が高い。また、日本や海外からサウナを目当てにした旅行客が来るようになり、サウナが観光資源となり得ることに気づき始めた。それは日本でも同じで、従来の温泉やジムに脇役として存在していたのとは違う、サウナを主役とした個性豊かな施設が全国各地で誕生している。持ち運び可能なテントサウナを利用したサウナイベントも各地で盛況だ。

さらにサウナはイノベーションも生み出す。例えばフィンランドで最近人気のライ麦から作られたジンは、友人同士がサウナの中で話していて生まれたアイデアから生まれた。似たような話は数多く聞かれる。起業ブームのフィンランドには世界各国から毎年応募が殺到する起業支援キャンプがあるが、その名も「スタートアップサウナ」。多様な人たちが集まって議論し「アツく」なる意味を込めたネーミングだが、実際、拠点となっている大学施設にはサウナルームがあり、火は入れずともリラックスした雰囲気の中、話ができるようになっている。

【自由なリラックス空間】

さらに在宅勤務が中心となった今年は、自宅のサウナをテレワークに使う人もいる。実際使っている友人いわく、静かで落ち着けるのだそうだ。

サウナはちょっと苦手、という人には、是非いつかフィンランドでサウナを体験してもらいたい。特に決まったルールはない。体がぬれたまま入っていいし、石にかける水の量も自由でいい。おしゃべりをしてもいいし、体調と気分次第で滞在時間を決めていい。フィンランドでは通常、熱くなったら外気浴やシャワーでクールダウンするが、湖や海辺のサウナであれば水に入って泳いだり、雪の上に寝転がったりもできる。無理に「ととのう」必要もない。サウナの中にテレビはなく、デジタルデトックスにもなる。まずはサウナでリラックス。それが思わぬ効果を生むかもしれない。

(文=堀内都喜子)
【略歴】堀内都喜子(ほりうち・ときこ)フィンランド大使館広報部プロジェクトコーディネーター。05年(平17)フィンランド・ユヴァスキュラ大学院コミュニケーション専攻修士修了。帰国後は都内のフィンランド系機械メーカーに勤務する一方、ライター、通訳として活動。13年から現職。長野県出身、45歳。

日刊工業新聞2020年12月28日

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サウナ

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