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過去のピークを越えた!ベンチャー投資は今がチャンス

ベンチャーエンタープライズセンター(VEC、東京都千代田区)がまとめた年次報告「ベンチャー白書2020」では、2019年度のベンチャーキャピタル(VC)投資金額が2891億円と集計を始めてからの20年間で過去最高となった。足元ではコロナ禍もあり、国内VCの国内投資が20年上半期(1―6月)は747億円と前年同期比で26%減った。しかしファンド組成は高水準にあり、経済不安でベンチャーを安く買える。VCは投資のチャンス到来と意欲的だ。(取材=小寺貴之)

【「ついに越えた」】

「ついに、ようやく、越えた」とVECの市川隆治理事長は言葉を詰まらせる。理事長に就任して10年、リーマン・ショックで875億円まで減ったVC投資が過去のピークを越えた。それまでは集計を始めた2000年の2825億円が最高だった。当時はITバブルに沸いて投資件数は3736件。19年度は1824件で2891億円と、1件当たりの投資額は倍になった。

事業を見極め、成長に導く。そのためには時間も投資も必要だ。市川理事長は「ベンチャーを成長戦略の柱とし、政府一丸となって施策を投入してきた」と振り返る。起業家育成や技術開発支援、オープンイノベーション促進税制など、政策面での後押しもあった。

足元ではコロナ禍で国内VCの投資額は減った。だがVC自体の資金調達はできている。20年上半期の組成されたファンド総額は1659億円と高水準にある。黒田啓征総務企画局長は「経済不安でベンチャーの評価額が下がっている」と指摘する。つまりVCは資金はあり、ベンチャーを安く買える状況だ。コロナ禍で社会と産業が大きく揺れ、オンラインサービスを中心にベンチャーが事業を拡大する余地が大きくなっている。

【大企業と連携を】

VECのヒアリング調査では、いまがチャンスと積極的になっている。産業革新投資機構(JIC)が7月に設立し、1200億円を出資するJICベンチャー・グロース・ファンド(VGI)の投資が20年下半期の投資を支えると期待する声もある。

それでも米国や中国と比較すると、日本は1ケタも2ケタもベンチャーへの投資金額が小さい。19年は米国が14兆5441億円、中国が2兆4913億円だった。ベンチャーとしては資金調達だけに頼らず、大企業などとの連携を駆使して事業を育てる必要がある。

ベンチャー経営者へのアンケートでは51%のベンチャーがすでに大企業や中堅企業との協業をしており、協業の意向があるベンチャーを加えると87%が連携に積極的だった。ベンチャーはコロナ禍で新しいビジネスに切り込んでいる。市川理事長は「大企業にとってもベンチャーにとってもオープンイノベーションは経営の柱」と強調する。

日刊工業新聞2020年12月8日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
ベンチャー投資界隈ではコロナ禍で事業会社が投資を引きあげるから、せっかく育ちつつあるベンチャーが潰れてしまう、公的な支援が必要だという声がありました。ベンチャーの資金調達を代行して報酬を得る事業者にとって、投資話がコロナ禍でかき消えると大変なことになります。実際にはVC自身の資金調達は堅調で投資を絞っています。コロナ禍で勝ち筋が変わり、ポートフォリオを入れ替え、VBの評価額が落ちているので買い時だそうです。そして官民ファンドの稼働を期待しています。米中ではVBへの投資額もVCの資金調達も伸びています。投資件数は絞り大型投資で大きな勝負にでています。勝ち筋が変わったためです。せっかく育ちつつあるベンチャーはどんな相手から投資を受けたいと考えるのだろうと思います。

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