教えます!中国ロボベンチャーの強さの理由

Kyoto Robotics社長・徐剛⑤

 2018年11月6日から9日まで中国・上海で開かれたアジア国際マテリアルハンドリング・イントラロジスティクス見本市「CEMAT Asia(セマット・アジア)」に行ってきた。今回は、見聞した中国のロボット事情について報告したい。

 以前触れたことだが、物流で使うロボットは無人搬送車(AGV)の系統と移載ロボ=ピッキングロボとに大別できる。AGVは平面移動するだけで3自由度しかないのに対して、ピッキングロボは一般的に6自由度であり、技術的には難しい制御を必要とする。ただ、いずれもセンシングが不可欠であり、いわゆる知能を持ったロボでなければならない。

 セマットは物流の展示会なので、伝統的な立体倉庫やコンベヤーの展示も多い。立体倉庫も見方によって、ある種のロボットと言えなくはないが、やはり目立つのはAGVと自動フォークリフトの種類の多さとメーカーの多さであった。自動フォークリフトはパレットを持ち上げる以外はAGVとほぼ同じであり、多くのAGVメーカーが自動フォークリフトも開発販売しているようにみえた。

 2017年の全世界でのロボットアームの販売台数は38万台とされる。うち、中国はほぼ3割の12万台を占めた。中国の国内メーカーも頑張っているが、国内シェアは3割に留まり、世界の4大メーカーであるファナック、安川電機、スイスのABB、独クカのシェアは中国でも高い。4社の長年の蓄積をベースにしたアナログ技術には簡単には追いつけず、追い付くのを半分諦めた論調もある。だが、センサーを持った知能ロボではどのロボメーカーも同じスタートラインに立っている。むしろ、デジタル技術が主となる知能ロボは中国の方が進んでいるかもしれない。少なくともAGVは中国が既に世界一の生産量(年産3万―5万台)になっている。

 12年に米アマゾン・ドット・コムがロボベンチャー企業の米キバ・システムズを買収し、アマゾンの倉庫でAGVを大量に導入し始めた。14年あたりから中国でもAGVのベンチャーが雨後のたけのこのように大量に誕生した。多くは大学の研究室で研究開発した技術とプロトタイプをベースにしている。

 一説によると、累計で400程のAGVベンチャーが中国で生まれたが、半分は既に消えたとも言われる。それでも200社ほどのAGVベンチャーが凌(しの)ぎを削っている。一部は既に米国等の海外市場にも進出している。そして、その勢いは今やAGVからピッキングロボにも広がりつつある。昨年来、中国に30社ほどのピッキングロボベンチャーが生まれたという。

 中国は09年に深圳株式市場に東証マザーズのようなベンチャー向け市場「創業板」を創設し、多くの技術ベンチャーを上場させてきた。19年には上海株式市場にもベンチャー向け市場「科創板」を開設する。ますます多くの技術ベンチャーに一攫千金(いっかくせんきん)のインセンティブを与えている。

 中国は豊富なベンチャー投資資金と巨大な国内市場があるのみながら、何よりも死ぬほど働く優秀な起業家集団があり、米国に匹敵するベンチャー大国になっている。「日本の4倍速」でイノベーションに励むこの巨大な隣国は脅威にもなるが、同時に大きな機会でもある。どのように対応するか、我々の戦略が問われている。
(全7回、毎日掲載)

日刊工業新聞2018年12月7日(ロボット)

  

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