ランプからマスクへ畑違いのモノづくり。成功の裏には改善意識と技術の横展開
ランプからマスク―柔軟な技術力
ヘリオステクノホールディング子会社のフェニックス電機(兵庫県姫路市、田原広哉社長、079・264・5711)は、露光装置用光源やプロジェクター用ランプ、ハロゲンランプなどの製品を手がける。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、6月からマスク生産を始めた。本社工場トップで製造部の宮野耕一部長に、マスク事業の参入の経緯や生産ラインの改善などを聞いた。(姫路・村上授)
―マスク生産を始めた経緯について教えて下さい。
「日本でマスク不足が顕在化してきた春ごろ、兄弟会社を介して生産設備を購入する話が出た。地域貢献の一環で1ラインを導入して生産を始めた。ノウハウのない中でのスタートで最初は躊躇(ちゅうちょ)したが、ランプ以外のモノづくりもできると実感した。現在は月60万枚を生産している」
―マスク生産ラインに本業の技術を生かした独自装置を組み込みました。
「ロールに巻かれた不織布からマスクを作る際、自社製の装置でライン上の不織布に紫外線を照射している。装置はラインの長さを考慮して細菌が不活化する照度を考えて設計した。また、異物や外形違いなど不良品が入っていないかを人手によって仕分けるとコストがかかるので、画像処理検査装置を導入した。同装置はランプ製造で電極同士の距離をチェックする装置の技術を応用した」
―畑違いであるマスクの生産を開始するにあたって社員の反応はいかがでしたか。
「(参入時に)マスクの生産ラインを希望する社員がいた。製造の人間として、今までとは違う物を作ってみたい気持ちになったのではないか。さらにマスクの生産設備が日々の改善によって変わっていく様子を見ていると、マスク以外の製品を担当している社員でも自分が働いている生産ラインも直したいという気持ちになる。実際、そういう改善をしたいという要望が出ている」
―社員に現場の改善を意識させる試みはありますか。
「改善活動を促す土壌が社内にはある。約10年前から年1回の改善発表会があり、金一封をもらえる社長賞を目指して社員が改善に取り組んでいる。工場だけでなく事務職も対象となる」
【ポイント/マスク開発、オファー続々】
「ガラスや金属の扱いはあったが、織物は初めて。何も知らない中で作らないといけなかった」と、宮野部長はこの数カ月間を振り返る。それでも生産ラインを立ち上げることができたのは、改善発表会で社員に改善を意識づける取り組みや、本業の技術を横展開できた点が大きい。国内のマスク不足は解消したが、営業部門を介して取引先のドラッグストアから新たなマスク開発の依頼もあり、畑違いのモノづくりはこれからも続きそうだ。