ロボット施工が進む建設業界、次の開発競争軸は何?
2020年の建設業界は技術連携が加速した。まず1月に大手ゼネコンの鹿島と竹中工務店がロボット施工・IoT(モノのインターネット)分野で包括技術連携を公表した。その狙いは開発したロボットや施工関連技術の相互利用。各社が個別に開発するロボットは、開発コストが高い割に必要とする台数が少なくロボット本体価格が高額となり、開発コストの回収が難しい。連携は建築現場で共通して使える機械や材料を共同開発し、量産化によるコスト削減を実現して開発したロボットなどの普及を加速するためだ。
鹿島と竹中の連携から約半年後の20年6月、最初の成果となるタワークレーン遠隔操作システム「Tawa Remo」を開発した。オペレーターが長時間拘束されることなく、操作するコックピットは場所を選ばす、離れた場所からゲーム感覚で高所作業車を操縦できる。1人の熟練オペレーターが多数のオペレーターを指導できるため、若手の教育や育成にも活用する。また、建設業のイメージが変わることで女性の入職にも期待する。
日本建設業連合会の試算によれば、少子高齢化の影響で建設技能作業員不足が予想される。15―25年の10年間で建設技能労働者が128万人減り、216万人となると予想する。人手不足の要因として、建設現場にはいまだ3K(きつい、汚い、危険)職場という“時代遅れ”のイメージが定着している。
10月、包括技術連携は拡大し、清水建設が参画した。狙いは生産性向上だけでなく、協力会社(下請け業者)の負担軽減もある。各社個別の開発ではロボットの機種が増え、現場では操作方法の習得が負担になっているという。生産性向上を目指す色彩が強かった連携だが、ロボット化により若手入職者の確保に軸足が移りつつある。
ただ、この技術連携は「競争」と「共創(協調)」を象徴する緩やかな協業関係。建設市場の縮小が予想されるなか、独自技術の開発競争に終わりはない。