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著作権の補償金受け取り、手数料を引くと…

これってどうなの?著作権 大学の現場で #10

大学の教育研究は社会の営みの上に成り立ち、教員は論文だけでなく芸術作品、プログラム、動画コンテンツなど日々、創作している。一定程度の管理が必要とされる局面も増えている。

以前からの慣行もあり、純粋な研究論文は今後も個人帰属を原則に推移すると考えられるが、新たな制度導入や流通モデルの変化があれば、対応を検討する価値がある。例えば改正著作権法35条施行で、大学の関心は管理団体に補償金を支払う予算措置に向かうが、著作物を数多く保有する大学や学会は補償金受け取り体制の検討も必要だ。

【規定中に明文化】

学会の多くは、投稿論文について学会誌での利用(印刷・電子ファイル)を前提に、著作権を学会に譲渡するタイプの投稿規定を持つため、学会の規定中に「補償金分配があった場合は学会の収入とする」など明文化するとよい。日本知財学会のように、教員に著作権を残したまま学会誌側に利用許諾をするタイプの場合は、補償金受け取りについて学会に管理を委託する、可能であれば補償金は学会収入とする合意形成をお勧めする。

なぜなら、個々の書籍に対する補償金額はわずかで、支払いコストを差し引くと恐らく個人への分配は困難と考えるからである。団体が受け取り主体となれば、少額でも何らかの金額を受け取る可能性は残るであろう。この点は各学会でも大学でも、2021年度中に検討を行うことが望ましい。

【責務相反の観点】

次に近年、筆者が懸念している構図を説明する。教員が学会に投稿料を負担してでも著作権譲渡をする理由は、自身の研究を社会に役立たせることと、そして学会誌投稿による著作物利用は、映画化などによる大きな価値化の可能性がないことが前提だ。しかし仮の事例設定として、著作権譲渡を受けた学会がデータベース業者にまとめて論文の利用許諾を出し、この業者が大学向けに設定した契約料金を必要以上に値上げをする事態が考えられる。こうなると枠組みの構図を修正する議論が発生するだろう。

論文以外でも大学のリソースを利用して開発されたデジタル教材の権利帰属など、利益相反や組織としての責務相反の観点も含めた検討が必要になると考えられる。

◇帝京大学教授・共通教育センター長 木村友久

日刊工業新聞2020年11月19日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
著作権は身近なだけに対価も気になるが、例えば書籍は(特別有名な著者などを別にしてだと思うが)10%が標準と聞く。つまり1000円の本が1冊、売れて、著者に手元に入るのは100円というわけだ。残念ながらベストセラーにならないと「もうかる」感じにはならない。この記事でも「支払いコストを差し引きひくと個人への分配は難しい(ごくわずか)で、団体が受け取り主体になれば(数十人分などになるため)何らかの金額が受け取れる(団体の活動支援にはなる)」と書かれている。ちいさな「捕らぬ狸の皮算用」をするのでなく、団体や社会の利益を考える姿勢で、かっこよくいきたいものだ。

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