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人工呼吸器や透析装置...医療機器の“国内回帰”を政府が後押し

経済産業省は海外からの調達依存度が高い医療機器を対象に、国内での生産基盤強化に乗り出す。医療現場での緊急性が高い機器や消耗品を中心に、国内で一定の生産が可能な体制の構築を支援する。代替部品による置き換えが難しく生産のハードルが高い医療機器の特性を踏まえ、継続的に供給可能な体制の構築で新型コロナウイルスをはじめとする感染症や災害など緊急時の対応力を高める。

国内での生産能力を確保するため、人工呼吸器や透析装置など医療現場に欠かせない機器を対象にメーカーによる開発の動きを支援する。特に代替が難しい構成部品や消耗品を中心に国内でもカバーできる体制を築き、緊急時における供給途絶のリスクを減らす。

性能や形状など厳格な基準が求められる医療機器の特性を踏まえ、体制構築に必要な各種検査や認証などを取得する動きも支える。一部の構成部品については供給できるメーカーが限られるため、基盤強化の動きを通じて分散化を図る。

事業は2021年度から始め、5年間の展開を見込む。医療機器以外にも、コロナ禍による「3密」回避や在宅介護のニーズに対応する介護機器開発への支援も想定している。

国内における医療機器の供給体制は新型コロナの世界的流行を機に不安定な部分が顕在化した。人工呼吸器の場合、90%以上が欧米を中心に海外からの調達に依存している。日本メーカーの海外拠点で生産した他の医療機器を含め、一部で生産国による囲い込みへの懸念が広がった。

医療関連製品の中でもマスクや消毒液などの消費財と比べ、医療機器や関連部品の生産体制を築き上げるには長期間を要する。設備導入だけでは解決できない部分も多いため、開発から事業化までの展開を支援して供給体制の強靱(きょうじん)化を図る。

日刊工業新聞2020年11月19日

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