「ミドリムシ」のユーグレナが新型コロナウイルスの抗体検査を提供する理由
ミドリムシを活用した食品や化粧品、バイオ燃料事業などを手がけるユーグレナが、新型コロナウイルスの抗体検査サービスを開発、提供を開始した。オーダーメードメディカルリサーチ(OMR、千葉県柏市)とリバネス(東京都新宿区)と共同で開発した国産の検査サービスだ。今後、ワクチンの効能調査などでも活用が期待される。バイオインフォマティクス事業を担当する高橋祥子執行役員に詳細を聞いた。
―検査はどのように実施しますか。
「医師が血液を採取し、OMRに送る。同社で検査し、結果を表示する。ユーグレナはサービスの提供元として機能している。リバネスにはOMRの技術を事業化するサポートをしてもらった」
―一般的な抗体検査と何が違いますか。
「陽性陰性の的中率が高い。血液を垂らすとすぐに結果が出る検査キットが多いが、精度の低さが問題になっている。当社は新型コロナ抗体が結合する抗原を活用し、抗体を集める。そこに標識となる物質を混ぜて検出し、高感度に抗体の有無と量を確認する」
―量が分かるのも大きな特徴です。
「抗体が発色するようにするため、プレート上にどのくらい抗体があるか数値として測定できる。定期的に検査することで体内の抗体の状況を把握できる。ワクチンが開発された場合、どのくらい抗体ができているか確認するのにも使える」
―開発において苦労した点は。
「陽性陰性の判断基準を作るのに苦労した。そもそも新しいウイルスのため、どのくらい抗体があれば陽性と言えるのか、という基準が曖昧だった。日本人のデータを元に、明確な基準を作る必要があった」
―1日何人程度検査できますか。
「現状、500人程の能力がある。今後需要を見て、もっと多いようなら拡充する計画だ。出てくる課題にはしっかり対応する」
―今後の展望は。
「ウイルスと共存するニューノーマルな社会に役立てたい。感染拡大が長期化する今、抗体量の把握はさまざまな場面で活用できるはずだ。また検査をOMRが実施するため、全データを蓄積できる。個人にフィードバックして終わるのではなく、日本の感染の推移を分析するなど、社会貢献につなげたい」
【記者の目/高精度武器に製薬との提携も】
普及が進む抗体検査だが、偽陽性など精度の低さが問題視される。精度が高い検査への転換は、今まさに求められているところ。波に乗れるか、注目が集まる。またワクチン開発において、効果を調べる検査は必要不可欠。製薬企業との提携で、利益を生む可能性もある。スピーディーな展開に期待したい。(門脇花梨)