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他社と協力して課題解決、新型メッキ装置を納入したJCUの戦略とは

他社と協力して課題解決、新型メッキ装置を納入したJCUの戦略とは

ロール・ツー・ロール式無電解ニッケルメッキ装置「ELFsUD」

無電解ニッケルで量産

JCUはポリイミドに施す無電解ニッケルメッキ装置「ELFsUD」の1号機を2019年に納入した。ポリイミドはスマートフォンなどの部材となるフレキシブルプリント基板(FPC)に用いる。原料ロールにメッキ後、再度ロール状とするロール・ツー・ロール方式の加工を実現するため、表面処理や搬送の自動化機械を手がける他社と共同開発した。冨田則之執行役員営業本部副本部長に開発の背景や戦略を聞いた。(市野創士)

―無電解ニッケルメッキの特徴と量産の課題を教えて下さい。

「従来のスパッタリング工法と比べて無電解ニッケルメッキは一度でフィルム両面にメッキが可能で、工程のコストを約半分にできる。量産のためにはロール・ツー・ロール方式の工法が必要だが、ロールをほどき薄いフィルムを搬送して加工し、再度ロール状にするためにはフィルムに接触してテンションをかけなければいけない。メッキ中の接触は不良の原因となる」

―そこで他社と共同開発しました。

「15年に搬送や表面処理の自動化機械を手がける企業と共同開発を始めた。表面処理で独自のアプローチをする先方の技術力の高さを見込んでのことだ。当社は外注など他社と協力して製品を生み出す経験があったため、業務遂行のスピード感の違いなど共同開発ならではの難しさは感じながらも円滑な協業ができた。約2年半で工法を確立した」

―どんな方法で課題を解決しましたか。

「フィルムが接触しても影響のない箇所や工程を探し出し、接触が許されないメッキ槽内ではメッキ液を噴流して非接触で搬送する技術を採用した。アイデア出しや製造におけるアライアンス先との協力、薬品の開発により実現できた」

―今後の展望は。

「厚さ12・5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の薄さに対応できることは大きな武器になる。この薄さであれば将来的に求められるスペックにも対応できる。最大搬送速度は毎分2メートルと高速化を実現した。スパッタリング工法や他社製品に比べ優位性があり、FPC製造の高速化・生産性向上に寄与できる。この強みを生かし、中国や東南アジアを中心に海外市場での拡販に力を入れていく」

JCU執行役員営業本部副本部長・冨田則之氏

【チェックポイント/5G製品のニーズ対応】

JCUは表面処理用薬品・装置で自動車部品やプリント配線板など電子分野でも存在感を示す。「装置と薬品の一体販売」を掲げ、第5世代通信(5G)対応製品に求められる配線の微細性や高面均性、信頼性などのニーズに応える。「FPCは今後も需要が倍増し続ける」(冨田執行役員)と分析し、ディスプレーの表示制御に用いられるチップオンフィルム(COF)基板の市場を中心に無電解ニッケルメッキ装置を展開する計画だ。

日刊工業新聞2020年11月17日

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