愛知県の製造品出荷額は日本一だけれど、スタートアップは?

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中経連の起業家育成プログラム「ビヨンド・ザ・ボーダー」は2期目も盛況
 愛知県は2018年の製造品出荷額等が46兆9681億円と41年連続で日本一。2位神奈川県の2・6倍と製造業の集積で存在感を示す。ただ主力の自動車産業は将来、電気自動車(EV)化やシェアエコノミーの進展で縮小する危惧もある。また次代を担うIT企業やベンチャー企業の集積は強いとはいえない。愛知県の財界、自治体、大学は起業家育成とスタートアップ企業支援に力を入れ始めた。(名古屋編集委員・村国哲也、市川哲寛、岩崎左恵)

中経連 イノベ促進プログラム始動


 中部経済連合会はイノベーションの啓発、担う若手人材の育成、具体的な新事業開発支援を柱とする事業「中部圏イノベーション促進プログラム」を18年度に始めた。人材育成プログラム「ビヨンド・ザ・ボーダー」では計10日間で先端分野の研究者や、大手の新事業開発担当、ベンチャー創業者らの講義やグループワークを受講、チームで新ビジネスプランを企画し実践の基礎を身につける。

 ビヨンド・ザ・ボーダー1期生26人の中からは、個人のビジネススキルと業務ニーズのマッチングなどのビジネスプランが生まれた。うち2件が事業化に挑戦中だ。現在、2期目が進行し、10月開講の3期生も募集中。20年度以降は年3クールと開講数を増やす。「口コミでの応募も増えた。さらに知名度を高め、ビジネスプランの具体化に向けた企業側の理解も深めたい」と担当者は話す。

 中経連は名古屋市と連携し、名古屋市中区にイノベーション拠点「ナゴヤ・イノベーターズ・ガレージ」も7月に開設した。約640平方メートルに催事スペースや多目的エリア、会議室、カフェなど計200席を備える。

 19年度は300近い催しを開催し、新たなアイデアの誕生や連携を促す。「受講生もテンションが上がっている」と担当者は拠点開設の効果を説く。大学研究者やベンチャー経営者とのマッチング、社会人や子ども向けのプログラム、企業の独自企画などが新たに始まり催しも多彩になっている。

愛知県 協業説明会に100社超出席


 愛知県はスタートアップ企業への支援を拡充している。全国のスタートアップ企業と県内のモノづくり企業とのマッチング事業に加え、県内のスタートアップ企業の海外展開支援や起業を目指す人材の育成事業を展開。スタートアップのアイデアやテクノロジーを生かす機会を設け、新たなビジネスやサービス創出につなげる。

 マッチング事業はCreww(クルー、東京都目黒区)と共同で行う。9月に開くマッチングイベントでは、県内企業が課題や挑戦する領域を示し、それに対して主に首都圏のスタートアップがソリューションや協業を提案する。成果発表会で成功事例を共有する。7月に名古屋と東京で開いた説明会には100社以上が出席するなど企業の関心は高い。

 海外展開支援は米テキサス大学オースティン校(テキサス州)と連携して行う。PDエアロスペース(名古屋市緑区)など8社の技術についてテキサス大が市場性などを調査、8月のコンテストで次のステージに進む4社程度を選ぶ。その後は同大のメンターが事業内容などをブラッシュアップし、投資家やビジネスパートナーを探索する場を設ける。

 起業家育成プログラムは9月開始。県の支援策などの講義を受けながら事業計画を練り、20年1、2月に投資家や金融機関、大手企業を招いてプレゼンテーションする場を設ける。

大学 各校の特徴生かし起業家育成セミ


 名古屋大学、豊橋技術科学大学、岐阜大学、名古屋工業大学、三重大学は16年から東海地区の大学の学部生、卒業生らによる大学発ベンチャーの教育から支援までを行う「Tongali(とんがり)プロジェクト」を実施している。

 各大学の特徴を生かした起業家育成のセミナーや、共通のスクールを受講できるほか、スタートアップ準備資金の援助なども行う。

名大内のコワーキングスペース

 名大では、とんがりプロジェクト発足前にベンチャー企業の設立が1年間で1―2社だったが、発足後は年間10社以上と増加している。

 19年は連携大学として名城大学も参加しており、東海地区の大学発ベンチャーのさらなる起業家教育、支援を行う。

 豊橋技術科学大では、6月に大学発ベンチャーの認定に関する規則を策定した。第一号に、においセンサーの開発・事業化を行う、アロマビットシリコンセンサテクノロジー(ABSST、川崎市高津区)を認定した。

 犬の嗅覚相当の高解像度で、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)の技術を使用したセンサーで大きさが1ミリメートル角と小さい。

 今後スマートフォンや家電などに搭載されることを目指して開発、事業化を進めている。

民間 名古屋にふ化施設、10月開所


 民間企業では、東和不動産(名古屋市中村区)が名古屋市西区の小学校跡を名古屋市から借り受けてインキュベーション施設「なごのキャンパス」を10月28日に開所する。事務所の入居社を募集しているほか、個人で1日1500円(消費税抜き価格)からでも利用できるフリーオフィス、固定席のシェアオフィスも用意。

10月に開所するインキュベーション施設「なごのキャンパス」

 さらに会議室や飲食店舗、オープンキッチンなどを持ち、ビジネスマッチングやセミナーなどのイベントも開催する。

 運営委員会には名古屋商工会議所やパソナグループの業務受託サービス会社が参加する。業務上の支援や専門家の紹介などでスタートアップ企業の成長を後押しする。

日刊工業新聞2019年8月15日

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