コロナで意義が浮かび上がった学術研究、DXでさらに発展するか

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ウィズコロナ時代の学術研究はデジタル革新(DX)がキーワードになりそうだ。DXはデータ活用の第4の研究手法「データ駆動型研究」をはじめ、各種データベース(DB)によるデータ基盤、学術情報ネットワーク(SINET)などの情報基盤、スーパーコンピューター、遠隔操作の研究機器などが掛け合わされて発展する。これにより予想外の危機に対応する多様な学術研究が、場所や時間を越えて発展し社会貢献する形がつくられそうだ。(取材=編集委員・山本佳世子)

【合同提言】

研究者の自発性に基づく学術研究は、目的志向型研究の対極にあり、実用化など社会貢献の意識が薄いとされてきた。しかし新型コロナウイルス感染症対応では自然科学だけでなく、経済学や心理学、哲学など人文・社会科学の基礎研究による知見の重要性も注目された。これを機に文部科学省の科学技術・学術審議会では学術分科会と情報委員会の両視点に基づき、振興方策の合同提言をまとめた。

情報システム基盤は今後、「データ×ネットワーク×スパコン」で掛け合わせた一体的運用が重要になる。例えば試行段階のスパコン「富岳」の新型コロナの研究で、治療薬候補の絞り込みや、くしゃみのしぶき広がりシミュレーションが耳目を集めた。

学術研究での背景としては近年、登場してきた「データ駆動型研究」がある。これは理論、実験、シミュレーションに次ぐ、第4の科学的研究手法といわれる。

具体的にはスマートフォンなどの情報を、ネットワーク経由で収集し、スパコンでそのビッグデータ(大量データ)解析をして、研究成果を導くイメージだ。

【国際化にも有効】

全国の研究者に開かれた共同利用・共同研究の仕組み(大学共同利用機関法人など)でも、DXによる高度化が図れる。実験や観察の遠隔システムが構築されれば、出張・滞在の費用や時間を抑えられ、効率化されるからだ。

これは国際化の点でも有効だ。これらも支える高速ネットワークのSINETは、さらに学術研究だけでない社会基盤インフラとの期待も出ている。

【科研費変化促す】

また学術研究向けの重要な研究資金、科学研究費助成事業(科研費)でも、変化が促されそうだ。2019年度の科研費の繰り越し申請は、新型コロナによる研究停滞を受けて1・5倍になった。これを踏まえて提言では、繰り越しが可能な基金化を、全研究種目で実現することを求めた。

日刊工業新聞2020年11月12日

COMMENT

山本佳世子
科学技術部
論説委員兼編集委員

学術研究は、社会との関わりが薄いテーマも多い。「研究者の自由な発想による学術・基礎研究に支援を、と大学関係者はずっと主張しているが、一般社会には伝わらなかった」と文科省の担当者は振り返る。それがコロナによって、さまざまな学術研究がある中から、社会に重要なものが出てくるという意義ある部分が浮かびあがり、「学術研究で社会に貢献する」という論法になった。同じ非常事態、まもなく10年となる東日本大震災の時は、どうだったのだろうか。3月に向けて動きだす関連取材の中で、注目してみたい。

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